研究課題/領域番号 |
15J08964
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 舞 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 中国考古学 / 殷 / 青銅器 / 青銅器銘文(金文) / 製作技術 / 生産 / 印紋硬陶 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、青銅器および玉器の生産・流通から、殷代及びその並行期における中国全体の社会構造の復元を目指すものである。本年度は、その第1年度として、まず青銅器生産のあり方の解明に焦点を当て、以下4つの作業を行った。 (1)殷代青銅器研究の基礎作業として、各種の発掘報告書、簡報等を手がかりに、過去中国全域で出土した殷代青銅器のデータベース作成した。(2)殷代における青銅器生産体制のあり方を解明する際、従来あまり着目されることのなかった青銅器銘文(金文)に焦点を当て、①銘文の形と②作り方を手掛かりに、青銅器そのものの生産のあり方を復元していく方法を考えた。本年度は、研究の構想を練り、基礎的な実験を行い、研究計画の細部を詰めた。研究計画の実行は来年度以降である。(3)東京大学にて殷周青銅器研究を円滑に進めるための情報収集の一環として、文学部考古学研究室の所蔵する金石著録に関する調査・目録作成を行った。また、これらの金石著録が収集された当時の、中国考古学に関わる日本の学界の動向との関係性について考察した。その成果は東文研・ASNET共催セミナー第121回(2015年7月)で報告した。(4)湖北省武漢市盤龍城遺跡にて、近2年の発掘調査で出土した「印紋硬陶」の実見調査を行った。「印紋硬陶」は、殷代における威信材のひとつとして考えられ、当該時期における青銅器の生産・流通の比較対象となり得る。現地では、製作技術に関する情報の採取、実測、写真撮影を行った。これらの情報は現在整理中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題が、殷代青銅器・玉器の生産・流通を対象としているのに対し、本年度はまず殷代青銅器資料の集成を進めると共に、青銅器生産に関連する問題について検討を進めた。その中で、青銅器銘文という新たな方向性を見出し、今後その検討を実現していくための体制作り・基礎的実験を進めた。青銅器生産に関する研究については、当初の予定より深化したと言える。また、本年度は殷代玉器にまでは研究が及ばなかったが、代わりに印紋硬陶に関する現地調査を実行することができた。研究計画にはなかったこととして、金石著録に関する調査・報告を行うこともできた。 なお、申請当初は、第1年度に米国調査を計画していたが、青銅器研究を上記のように展開させることができたためそちらに時間が必要だったこと、また2016年度には米国で東アジア考古学会議が開かれることから、それへの参加と合わせて、第2年度に持ち越すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度は、青銅器の製作技術を中心とした生産をめぐる問題について、上記の計画を実行に移していき、国内外の学会・シンポジウムでの報告、論文の執筆を進める。青銅器の流通をめぐる問題については、殷代青銅器についてのデータベース作りを継続する。青銅器の出土しない殷代遺跡についても、発掘報告書・簡報・『文物地図集』・『中国考古学年鑑』等に基づき、関連情報を集成する。その上で、黄河中流域・長江中流域それぞれを対象に、遺跡規模、土器の器種組成・型式差、青銅器の分布状況から、当該地域内における殷代遺跡群の関係性について考察する。また、第1年度の現地調査で得た、盤龍城遺跡出土印紋硬陶に関する情報を整理し、論文を執筆する。
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