第3年度の研究成果は、下記のとおりである。 (1)殷代青銅器・鋳型の実見調査:昨年度に続き、7~9月に台湾中央研究院で殷墟青銅器の実見調査を行った。その成果は、学会誌(査読有)に論文投稿し、すでに3校段階である。まもなく出版される。また、10月には中国陝西省周原遺跡で鋳型の実見調査を行った。日本国内でも青銅器を所蔵する研究機関へ赴き、資料調査・データ収集を進めた。(2)殷周青銅器鋳型の製作実験:昨年度に続き、6月・7月に富山大学で鋳型製作実験を行った。その成果は、8月のアジア鋳造技術史学会台北大会で報告済である。H30年度に論文を執筆する予定である。(3)青銅器資料の収集:都以外での青銅器の生産・流通状況を知るための一例として、山東蘇埠屯遺跡出土青銅器群を取り上げ、資料の収集・分析を進行中である。その成果は、H30年度以降となる予定である。(4)青銅器研究への3D技術導入の試み:青銅器製作技術研究の一環として、3D計測技術・データを用いた青銅器研究法をテーマに新たに民間助成金を獲得し、目下研究を拡大中である。(5)著書の刊行:『殷代青銅器の生産体制―青銅器と銘文の製作からみる工房分業―』を刊行した。刊行費用は別途、東京大学の助成金を獲得した。(6)海外誌への論文投稿:これまでに国内誌に発表した論文を中国語訳し、中国の学術誌に投稿した。 全体を通して、第2年度までの研究をさらに深めつつ、同時に3D技術を用いた青銅器研究、外部資金獲得等、新たな方向へ研究を展開させることができた。
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