研究課題
本研究では,土砂災害中に発生し,避難を阻害することで被害を助長しうるハザード群に着目し,前年度はこれを降雨関連ハザード群(視界不良,道路冠水,圧迫感,恐怖感等),崩壊関連ハザード群(がけ崩れ,表層崩壊,土砂流出等),および洪水関連ハザード群(堤防の越水,洪水氾濫,橋梁の破壊等)に分類してその発生を予測するシミュレータを開発した.本年度は,本シミュレータの応用手法を主に検討した.まず,前年度に引き続いて土砂災害に対する脆弱性を持つ山間集落を対象とし,複数の降雨データを用いた検証計算と警戒避難手法の検討を実施した.これにより,シミュレータの妥当性と,非常に短期的かつ強度の大きい降雨が発生した場合に安全な避難がほとんど困難になることを示した.次に,本シミュレータの警戒避難への直接的な応用手法を検討するため,実際に土砂災害警戒情報の発令に用いられている土壌雨量指数と60分積算雨量を軸とした平面を用いた手法を提案した.ここでは降雨継続時間と最大降雨強度が異なる複数の降雨を用いてシミュレータを適用し,地点毎に得られる各ハザード群危険レベルを同平面上にプロットした.これにより,同平面上に降雨・崩壊・洪水関連ハザード群の発生限界線がそれぞれ導かれ,これを重ね合わせた領域図が得られた.これを用いることで,降雨情報からハザード群の発生に関する情報を推定し,既往の土砂災害警戒情報に追加できる可能性が示唆された.ただし,以上の検討は中央ピーク型のハイエトグラフを用いた場合に限った議論であり,また降雨の偏在による影響が考慮できていないため,このような観点のもとでより詳細に検討していくことを今後継続的に検証すべき課題として挙げた.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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砂防学会誌
巻: Vol. 69, No. 6 ページ: 15-23
土砂災害に関するシンポジウム論文集
巻: 8 ページ: 241-246