研究課題/領域番号 |
15J08994
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山上 遥航 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | インド洋 / 南赤道海流 / 北東マダガスカル海流 / 南東マダガスカル海流 / Island Rule / エルニーニョ |
研究実績の概要 |
南インド洋を西向きに流れる南赤道海流(SEC)は、マダガスカル島沿岸で、北東マダガスカル海流(NEMC)と南東マダガスカル海流(SEMC)へと分岐している。これらの分岐緯度や流量の変動は、モザビーク海峡やマダガスカル南西沖で卓越する渦活動に影響し、さらにその下流におけるアガラス海流や、インド洋-大西洋間での海水交換に影響を与える可能性がある。そこで今年度は、「1. SECの分岐緯度(SBL)、およびNEMCとSEMCの流量の経年変動」について調べ、そのメカニズムを明らかにした。また、そのための「2. SBL変動を表現する理論の構築」にも取り組んだ。 1. SBL、およびNEMCとSEMCの流量の経年変動を調べるために、観測データと、独自に拡張したTime-dependent Island Ruleと呼ばれる理論モデルを用いた。その結果、いずれについても、主にインド洋の内部領域での正味の南北輸送量に対する応答であることが分かった。また、内部領域の南北輸送は、主に60°E-90°Eにおけるエクマンパンピング偏差により励起されたロスビー波により作られていることが明らかになった。 次に、南インド洋での風応力偏差の要因を調べた。その結果、主にエルニーニョ(ラニーニャ)に伴う、オーストラリア北西沖の高気圧性(低気圧性)偏差のためであることが明らかになった。なお、この結果は大気大循環モデルを用いた感度実験によっても支持された。 2. Time-dependent Island Ruleにおいて、海洋の東岸境界からの体積流入、東岸境界からの波動の放射、非線形効果の影響を考慮した式を、独自に導出し、これらの効果と、既存の理論モデルで考慮されていた効果との相対的な関係を、定量的な分析により初めて明らかにした。その結果、経年変動の時間スケールでは、内部領域での南北輸送に対する応答が卓越することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に予定していた、「南赤道海流の分岐緯度、および北東/南東マダガスカル海流の流量の経年変動のメカニズム」に関する研究に加え、一部、平成28年度に予定していた「海洋の東岸での波動や体積流入、及びマダガスカル島沿岸での非線形効果」に関する研究も行うことができたため、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、マダガスカル島沿岸における、南赤道海流(SEC)、およびその分岐後の、北東マダガスカル海流(NEMC)と南東マダガスカル海流(SEMC)の流量の変動が、下流域であるモザビーク海峡やマダガスカル南西沖で卓越する渦活動変動に与える影響や、これらの渦の変動を通したアガラス海流への影響について、定量的な評価を行い、力学的なメカニズムを明らかにする。平成28年度の具体的な研究方針は以下の二つである。 1. NEMCとSEMCの流量の変動と、モザンビーク海峡/マダガスカル南西沖での渦の発生の関係を調べる。Chelton et al. (2011)で提案されている渦を同定する手法を用いることで、衛星観測による海面高度偏差データから渦を抽出し、その発生点、軌道、到達点、個数等、様々なパラメータを個々の渦を検出し特定する。次に、NEMC、SEMCの流量との関係を適切に表現する統計モデルを明らかにする。 2. 衛星観測データに基づく解析では、海洋内部のデータを得ることができないため、個々の渦の発生における、力学メカニズムを調べることができない。そこで、高解像度海洋大循環モデル(OFES)によるシミュレーションの結果を解析することで、海流と渦運動の間の力学的関係を明らかにする。特に、海流から渦へ輸送されるエネルギーの変換機構に着目し、その変動に寄与していると考えられるNEMC、SEMCの役割を定量的に評価する。 得られた研究結果は、随時、国内・国際学会において発表し、論文として執筆し、国際誌に投稿する予定である。
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