研究課題
本研究の目的は、HIV-1侵入過程における、細胞膜流動性とエンドサイトーシスの関係に着目し、シグナル伝達メカニズムの解明と予防法の開発に供することである。宿主細胞とHIV-1の膜融合は、HIV-1侵入において最も重要な過程のひとつであるが、この過程を標的とした薬剤は未だ少なく、さらなるウイルス侵入阻害薬の開発が期待されている。ウイルス侵入過程を制御することができれば、その後のウイルス複製に至るまでのイベントを止めることが可能である。平成27年度は、以下研究を遂行した。1.ウイルスの宿主細胞への吸着が及ぼすシグナル伝達経路の解明及び脂質ラフト形成への影響の検討 : HIV-1がPI3K/AKT経路を活性化することをWestern Blottingにて確認した。HIV-1感染はウイルスの濃度依存的、感染の時間依存的にリン酸化AKTを活性化させることが判明した。また、組み換えgp120 (HIV-1 envelope protein) を同細胞に処理し、リン酸化AKTの発現を確認したところ、生ウイルスを感染させた時と同様にリン酸化AKTが活性化されることが判明した。また、細胞膜流動性を亢進させることで脂質ラフトの凝集(クラスター形成)が確認され、PI3K/AKT経路阻害剤処理によりクラスター形成は抑制された。従ってHIV-1 の細胞への吸着または侵入過程でPI3k/AKT経路が活性化していることが示唆された。2. HIV-1侵入過程におけるPI3K/AKTシグナルの重要性の検討 : PI3K阻害剤によりシグナルを抑制することでHIV-1感染は有意に抑制された。また、HIV-1エンベロープタンパク (Env) 依存性細胞融合もPI3K阻害剤を処理することで有意に抑制された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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