研究課題
電気光学効果を利用した高感度テラヘルツ波検知器の実現に向け、サファイア基板上に面方位を制御した高品質ZnTe薄膜を作製することを目指す。関連してサファイア基板上へZnTe薄膜の成長機構を解明した。サファイアS面、R面基板上に作製したZnTeの面方位をXRDの極点測定により評価し、今まで得られた『サファイアc軸によるZnTeの面方位制御が可能である』という仮説の検証を行った。S面では仮説通りになったが、R面では仮説通りではなく、S面と同様のZnTeドメインが配向し、結晶性はS面上ZnTeより良いという結果が得られた。表面原子配列を検討したところ、c軸によるZnTeの面方位制御よりも原子配列が配向に与える影響の方が大きいことが明らかになった。また、ZnTeとサファイアの間にある大きな格子不整合により、ZnTeの高品質化が難しいとう問題点があった。そこで、基板の熱処理に注目した。熱処理によって得られる原子層スケールのステップ-テラス構造が薄膜の高品質化を促すという結果が得られた。更に、ZnTeの結晶性の改善を目指して、サファイア基板表面原子の制御に注目した。そこで、硫酸と過酸化水素水の混合液による洗浄を行ったサファイア基板がZnTeの結晶ドメインに与える影響を調査し、ZnTe/サファイア構造の界面の化学状態を制御することがZnTeの高品質化には重要であることが明らかになった。基板と薄膜の界面に出来る転位の数そのものを減らす手段として、選択横成長(ELO)に注目した。SiO2マスクパターンを作製したサファイア上ZnTeの選択成長の検討を行った。通常の成長に比べ制限された基板温度や分子線強度、成長速度の成長条件で選択成長することが明らかになった。しかし、横方向へのZnTeの成長はほとんどみられなかったため、ZnTeのテンプレート層を挿入した上にZnTeのELOを検討している。
1: 当初の計画以上に進展している
27年度の目的は(1)サファイア基板上へのZnTe薄膜の成長・配向機構の解明、(2) 原子層スケールのステップ-テラス構造による薄膜の高品質化であった。(1)に関しては、様々な面方位基板に関して、サファイアc軸によるZnTe薄膜の面方位制御が可能であるという十分な知見が得られており、順調に推移していると考える。また、(2)についても、熱処理したc面基板上ZnTe(111)薄膜において、ZnTe111ロッキングカーブの半値幅が400arcsecの高品質薄膜が得られている。更に、m面ではS面とr面からなるナノファセット構造が熱処理することで現れ、現れたS面ナノファセットによってZnTeの面方位が制御出来ることが明らかになっている。更に、28年度に行う予定であったサファイア基板上ZnTeのELOに向けて、まずSiO2を用いたサファイア基板上ZnTeの選択成長に関する知見を得ることが出来たと考えられる。
27年度の研究は概ね順調に進展したので、今後は、サファイア上にZnTeのテンプレート層を挿入した基板上でのZnTeのELOとナノファセット構造を持つサファイア基板によるZnTeの面方位制御を行う。サファイア基板上ZnTeの選択成長で得られた成長条件を参考にして、ZnTeのテンプレート層を挿入した基板上でのZnTeのELOを行い、ZnTe薄膜の低転位化を目指す。更に、m面に大きなオフ角を付けることでS面ナノファセットの位置を制御し、ZnTeの面方位制御を行う。また、研究成果を口頭発表や論文で報告し、博士論文の執筆を行っていく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件) 備考 (2件)
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