研究課題/領域番号 |
15J09168
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高畑 遼 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 極細金ナノロッド / 表面プラズモン共鳴 / レイリー不安定性 / オレイルアミン |
研究実績の概要 |
極細金ナノロッド(AuUNRs)の劣化過程を調べ、高温、あるいは表面保護剤が低濃度の条件下において、直径が2 nm以下のAuUNRsが球状微粒子へと変形することを我々は発見した。今年度は特に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてその途中過程を明らかにすることに注力した。AuUNRsの劣化過程の溶液を途中でサンプリングし、TEMにより、ロッドの形状を直接観察した。TEM像から、ロッドの長さが時間とともに短くなり、最終的に直径が約2 nmの粒子まで変化していることが明らかとなった。以上のことから、ロッドは高温、あるいは表面保護剤が低濃度の条件において、長さが短くなっていくことが直接的なTEM観察により明らかとなった。この現象は表面保護剤であるオレイルアミンによって抑えられていたレイリー不安定性がオレイルアミン低濃度条件下では顕著に現れたためであると考えている。これらの結果は J. Phys. Chem C にて報告済みである。 次に、合成したAuUNRsの結晶構造を評価した。TEMを用いて、約500個のAuUNRsの結晶構造を観察した。AuUNRsの結晶構造を詳細に解析した結果、約80%のAuUNRsがfcc構造の111面を共有して連結した双晶構造をもつことがわかった。他にも110方向に伸長した単結晶性のAuUNRsと多結晶からなるAuUNRsがTEMで観察された。さらに、多重双晶を構成する結晶子サイズから、大部分のAuUNRsが、fcc構造の結晶が111面を連結した多重双晶構造体をもつと結論した。AuUNRsの最も単純化されたモデル構造として、Au147量体相当の立方八面体が双晶面を介して111方向に連結した一次元構造を提案した。これらの結果についても上とは別の J. Phys. Chem C にて報告済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に続けてオレイルアミンによって保護された極細金ナノロッド(AuUNRs)の性質やその構造を詳しく調べた。それによって、オレイルアミンに保護された直径が1.6 nm前後のAuUNRsにおいて、双晶面が周期的に見られることを見出し、その周期性から、AuUNRsは立方八面体のAuの147量体が1次元に連結した1次元オリゴマーであることがわかった。このことは、極細金ナノロッドがすでにクラスターの連なった異方性クラスターとしての性質を示すことを明らかにした重要なモデルである。本研究課題の中心的な内容である異方性金クラスターの構造評価に成功したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより精緻な異方性金クラスターの合成を目指したい。 今後より重要なのは、どこまで構造が厳密に決定した異方性クラスターを極細金ナノロッドから作ることができるかということである。理想的には組成が単一に定まった異方性金クラスターの単離精製を目指して、極細金ナノロッドの精密分離などを目指す。
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