本研究では動画像,特に医用動画像における自動解析(イベント検出)を目的として研究を実施した.本研究におけるイベント検出とは,術中の重要な医療行為や画像中における見慣れない事象(例えば,病変画像)を検出することを意味する.これらのイベントを大量の動画像から自動検出することで,術後の手術解析や診断を効率的に行うことを目的としている.対象の動画像として,覚醒下脳腫瘍摘出術の術中映像やカプセル内視鏡画像を取り扱った. イベント検出を行うにあたり,これらの医用動画像では検出対象となるイベントの出現頻度が低い点に着目した.具体的には,イベント発生区間以外のフレームを用いて動画像の正常性を表現するモデルを構築し,そのモデルから逸脱するフレーム区間をイベントとして検出する.正常性を表現するモデルとして,本研究では自己組織化マップを改良したモデル(自己組織化モデル)と深層学習の一種である畳み込み自己符号化器を使用した方法をそれぞれ提案し,イベント検出に用いた. 医用動画像には照明変化やカメラの移動などの外乱が多く含まれるため,まず,モデルの検証として監視カメラ映像からの異常検知実験を行った.この実験では,最初に歩行者のみが登場する動画像を使用してモデルの構築を行い,そのモデルを用いて道路に出現する車両をどれだけ正確に検出することができるかを検証した.検証の結果,畳込み自己符号化器を用いた方法が自己組織化モデルよりも優れた性能を示し,また,従来の異常検知方法と比較しても優れた性能を示したことから,畳込み自己符号化器によるモデルを医用動画像に適用した. 覚醒下脳腫瘍摘出術映像,カプセル内視鏡画像からのイベント検出に適用した結果,イベントの検出が可能であることがわかった.しかし,外乱が多いフレームやモデル構築時に出現しなかったフレーム等に対する誤検出もみられ,提案手法の改良が今後も必要である.
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