研究実績の概要 |
毎年多量に排出される畜産廃棄物を堆肥として有効活用し、炭素貯留と資源リサイクルを両立することが期待されているが、堆肥の利用効率は低く化成肥料の併用が必要となっている。化成肥料低減化のためには、難分解化した堆肥の養分(窒素)を作物の需要に合わせて分解・放出させる技術が有効である。本研究課題では、易分解性有機物の添加による難分解性土壌有機物の分解促進効果(『プライミング効果』)を応用した低施肥栽培の技術化を目指し、北海道根釧地域の堆肥連用圃場の土壌を用いて、①易分解性有機物の土壌への施用によるプライミング効果の検証、②プライミング効果を促進する微生物の群集構造およびメカニズムの解明を行った。 採取した土壌に13C標識有機物を添加・培養し、易分解性有機物の土壌への施用によるプライミング効果の検証を行った。プライミング効果を発現させる基質濃度条件(易分解性有機物量)とその持続時間を特定し、プライミング効果に影響を及ぼす土壌の理化学条件(土壌pH、無機態窒素量)を抽出した。また、プライミング効果による難分解性有機物からの養分(窒素)放出量を定量し、採草地土壌ではプライミング効果によって土壌有機物からの『窒素採掘』が促進されることを確認した。易分解性有機物を添加・培養した土壌から抽出したDNAを用いて16S, 18S rDNA遺伝子の定量PCRを行い、黒ぼく土においてプライミング効果を担う微生物群集を推定した。黒ぼく土のプライミング効果では、従来報告されてきた真菌と共に、細菌もプライミング効果の重要な担い手であることが示唆された。
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