研究課題/領域番号 |
15J09249
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池町 拓也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
キーワード | 冷却原子気体 |
研究実績の概要 |
全光学的手法を用いた極低温量子縮退フェルミ・ボーズ混合系が完成し、安定して量子縮退する系を得ることができた。歴史的には混合系は、冷却が難しいフェルミオンについて、ボゾンを冷媒として冷却するために考案された。しかしながら近年超流動フェルミ・ボーズ混合系が実現されるようになり、混合系の量子現象そのものが注目されている。例えば、混合系の構造相転移、ボーズアインシュタイン凝縮の分散関係の変化、準粒子のライフタイムの変化、2種類の超流動の対向流や臨海速度、混合系の量子相転移の研究など、たくさんの重要な問題を研究できる可能性が拓かれている。 全光学的手法による極低温縮退系の実現は、シンプルなセットアップを実現するという意味で、技術的にも大変重要なベンチマークである。これまでにボーズアインシュタイン凝縮や縮退フェルミ気体では全光学的手法によるセットアップの報告があり、研究が進展している。本研究では、世界で初めて全光学的手法によって混合縮退気体系を実現し、報告した。特に本系では、光学トラップへ原子をロードする際にボゾンの数を調整することにより、冷却後にトラップ中に実現する最終状態をコントロールすることができる。また、ロードする際にボゾンの内部状態を選択することにより、ボゾン間の相互作用が斥力的か引力的かを決定することができる。今回、どちらの相互作用においてもボーズ凝縮することが確認された。なお引力相互作用するボゾンとフェルミオンの混合縮退系の実現は世界初である。これらの結果は、実験的にパラメタをチューニングすることにより様々な混合量子縮退系が実現できることを示しており、今後この実験系を利用して混合量子系の振る舞いを明らかにしていきたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では今年度に熱力学関数の決定に至ることがひとつの目標であった。それに照らし合わせるとやや研究計画からの遅れが見られる。一方で、ボーズフェルミ混合凝縮体を実現できたことにより、当初の計画を大きく超える物理を探索する事のできる可能性が拓けた。例えば、混合系の構造相転移、ボーズアインシュタイン凝縮の分散関係の変化、準粒子のライフタイムの変化、2種類の超流動の対向流や臨海速度、混合系の量子相転移の研究などである。さらに数値計算の手法を新たに開発し成果を出し始めている。これらの観点から、今年度の成果によって今後より大きな成果を上げることができそうであるため、この評価とする。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、熱力学関数の実験的決定を完了し、成果として報告したい。この実験においては、イメージングによって全ての情報を引き出す。そのため、精度の良いイメージング技術が必要とされる。これを現在開発中で、この結果を活かし、最終成果としてまとめたい。既に実験系も完成しており、今後測定と解析を進める。加えて今年度実現することのできたボーズフェルミ凝縮系を活かして、フレキシブルに研究を進める。具体的には混合超流動の系が示す相転移や、臨海速度の決定を視野に入れている。また新たに数値計算にも着手しており、実験に並行させて進めていく計画である。
|