研究課題/領域番号 |
15J09331
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
砂田 成章 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 重粒子線 / DNA-PK阻害剤 / p53遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究では、DNA修復阻害剤(DNA-PK阻害剤)であるNU7441と重粒子線との組み合わせを中心に、癌細胞の放射線増感効果を細胞老化の観点から検討した。ここではより簡便に多くの細胞を解析し老化細胞を検出する方法として、特異的にSA-βGalと反応し、蛍光を発するC12FDGを用いてフローサイトメトリー法で検出する方法を採用した(Debacq-Chainiaux, Erusalimsky et al. 2009)。この方法を用い、細胞老化がどのような条件でどの程度促進されるかを解析した。 細胞老化の重要な因子としては、癌抑制タンパク質であるp53を中心として、その下流にある老化関連タンパク質のp21を誘導することで老化に導くことが一般的であり、本研究では材料としてヒト肺癌細胞であるA549(p53正常型)とH1299(p53欠損型)を用いて解析を行った。そこで、これまでほとんど報告されてこなかったH1299(p53欠損型)においてNU7441と放射線の併用により有意に細胞老化が促進されたことを見出した。さらに、p21の発現をウエスタンブロッティングにより確認したところ、A549(p53正常型)においてはSA-βGalポジティブな細胞の割合と呼応するように発現量が上昇していることが確認できたが、H1299(p53欠損型)においてはp21の発現が観測できなかった。このことからNU7441と放射線併用によるH1299における細胞老化促進は、p53非依存的に起こっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで細胞実験においては、細胞老化とともにアポトーシスの観測も含め多角的に解析し、p53に依存しない細胞死誘導を見出せた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、観測されたp53に依存しない細胞老化経路について分子生物学的観点からさらなる詳細な解析を行う予定である。
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