研究課題
本研究は、がん細胞に対して細胞老化を促進させて、効率的にがんの増殖抑制効果を図ることを目的に解析を進めてきた。そこでDSB修復因子であるDNA-PKの阻害剤NU7441とX線ならびに重粒子線(炭素線)との放射線の組み合わせは、p53欠損のがん細胞において特に細胞老化を促進させ、高い致死効果を引き起こすことがわかった。そこでγH2AXを指標としたDSB修復挙動の解析を進めたところ、NU7441を細胞に毒性を与えない程度の低濃度(0.3 uM)で放射線と併用することで、DSB修復阻害を引き起こされずに放射線増感効果が引き起こされていることを見出した。さらに細胞周期解析から、上記の組み合わせで処理した細胞ではG2/M期アレストが24時間以上にわたって観測され、これらの傾向は特にp53欠損株において顕著であることがわかった。つまり、低濃度DNA-PK阻害剤と放射線の併用は、DSB修復阻害ではなく長期的なG2/M期アレストを介して、細胞老化をはじめとする細胞死を引き起こし、その結果特にp53欠損株で高い放射線増感効果が得られることが示唆された。これらの結果からDNA-PKの新たな機能発見につながることが期待され、詳細の解析が待たれるとともに、低濃度薬剤という観点は臨床応用への発展にも期待される。また、がん患者の約半数はp53遺伝子に変異を有しており、そのようながん細胞は放射線に対しても抵抗性を示す傾向があるので、p53遺伝子のステータスの違いによる治療戦略の提案に貢献できると考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Cancer Science
巻: 107 ページ: 1250-1255
10.1111/cas.12998