研究課題
本研究者はこれまで,閉塞性肺疾患モデルマウスである第2世代βENaC-Tgマウス(C57BL/6-βENaC-Tg)から見出した,亜鉛トランスポーターZIP2のスプライシング異常に関しての解析を行ってきた.また同時に,第2世代βENaC-Tgマウスと比較して,よりヒトの閉塞性肺疾患病態を模擬した第3世代βENaC-Tgマウス(βENaC-Tg / SMP30 KOマウス)の作製にも成功した.そこで今年度は,ZIP2のスプライシング異常などの病態メカニズム解明を第3世代βENaC-Tgマウスへと展開すべく,病態メカニズムに関する詳細な検討を行った.病態モデルの気道上皮細胞を用いた全転写産物解析(トランスクリプトームアレイ)を行うことで,これまで同定したZIP2の発現制御に関わる分子や新規の病態増悪に関連する分子の探索を行った.その結果,新たな病態関連因子として複数の非コード長鎖RNA(lncRNA)を同定した.また,ZIP2およびスプライシング異常に伴い産生されるZIP2スプライシングバリアントの詳細な機能解析を行うべく,それぞれの過剰発現およびノックアウト細胞系の確立を行った.今後,上記の遺伝子改変気道上皮や第3世代βENaC-Tgマウスを用いて,スプライシング異常やlncRNAの発現制御異常などの閉塞性肺疾患の新規病態メカニズムをより詳細に解明していくことで,閉塞性肺疾患病態の新規創薬標的の提案を目指す.
2: おおむね順調に進展している
現在,機能解析を目的としたZIP2の過剰発現およびノックアウト気道上皮細胞の確立も概ね順調に進んでおり,次年度には機能解析を完了することが可能である.また,ユニークな病態関連因子として,新規にlncRNAを同定することができた.
次年度は,閉塞性肺疾患で特異的に変動するlncRNAが,ZIP2の発現制御や病態増悪の各種シグナルおよび分子に関与するかを解明すべく,lncRNA過剰発現やノックアウト気道上皮細胞の構築を行う.また,現在構築段階であるZIP2・ZIP2スプライシングバリアントのCRISPR-Cas9システムによるノックアウトおよびレンチウイルスを用いた過剰発現気道上皮細胞株を用いて,閉塞性肺疾患病態に関与する分子の発現や活性を評価する.なお,上記の検討事項を踏まえた上で,実際に第3世代βENaC-Tgマウスを用いて,これまでの検討結果が本マウスでも観察されるかを確認する.同時に,これらの現象が,第3世代βENaC-Tgマウスの呼吸器病態に変化を及ぼすか否かについて明らかにするために,ノックダウン等を用いた評価およびスプライシング阻害剤投与などの薬理学的評価を併せて行う.
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