研究課題/領域番号 |
15J09433
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 学 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | MHD発電 / シードフリー |
研究実績の概要 |
研究開始初年度となる本年度では,Xeを作動流体とすることで,既存のシードフリーMHD発電の動作温度低下を実験ならびに数値解析で検討を行った。実験についてはXeを作動流体とする実験が可能となるように,Arを作動流体とする発電実験装置の改良を行った。その後,発電機に流入させるXeの温度を10000K~4000Kまで変化させながら発電実験を行い,作動流体をArからXeに変更することでの動作温度を低下を検討した。その結果,Arを作動流体とするときには動作温度7500Kで発電出力はほとんど得られなくなるのに対してXeを作動流体とすることで7500Kでも6%程度のエンタルピー抽出率が得られ,動作温度5000Kとしても1%程度のエンタルピー抽出率が得られることが明らかとなった。また,実験と平行してXeを作動流体とするMHD発電の電磁流体解析コードの製作ならびに数値解析を行い,電離不安定時のプラズマ構造が電離反応速度定数の差に起因してその波数が大きくなることが示された。 以上のXeを作動流体とするシードフリーMHD発電の研究が順調に進行したことから,研究開始当初,2年度目に予定していた高周波電磁界による予備電離実験に着手した。この実験では衝撃波管により生成された2500K程度の高温高圧のArガスを超音速ノズルでマッハ3まで加速した後に,高周波電磁界を高周波電源に接続された誘導コイルにより印加し,凍結希ガスプラズマMHD発電における予備電離を模擬させる。生成されたプラズマについては光電子増倍管による光学計測,ピエゾレジスティブ素子による圧力計測,ならびに高速度シャッターカメラによる複数方向からの構造撮影を行った。本実験は現在も進行中であり,次年度では本実験ならびに数値解析を早い段階で終了させ,その成果の発表を7月にソルトレイクシティで開催される国際学会での発表予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はシードフリーMHD発電の実用化へ向けてその動作温度低減の手法の一つとなるXeを作動流体とする発電実験ならび数値解析に取り組み,Arを作動流体とするときと比べて動作温度の低減ができることを明らかにした。本研究内容について精力的に発表を行い,査読付き論文誌1件への掲載ならびに2件の国内学会発表,1件の国際学会発表を実施している。また,以上のXeを作動流体とする発電実験が順調に進展したことから,次年度予定していた高周波予備電離実験にも繰り上げて着手しており,超音速流中における高周波放電の放電モードの検討や生成されたプラズマの計測など,既に一定の成果が得られており,1件の国内学会発表を行っている。 以上のことからシードフリーMHD発電の実用化へ向けて着実な進歩と期待以上の研究の進展を行えてたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の二年度目では,シードフリーMHD発電の実現に向けて必要となる高周波電磁界による予備電離について,実験ならびに数値解析による検討を行う。なお,この検討を行うにあたり必要となる実験装置ならびに数値解析コードの作成は前年度の研究が当初の計画以上に進展したことから,既に製作済みで基本的な実験データならびに数値解析結果が既に得られており,二年度目の前半の段階で結果をまとめ学会発表等に望む。 二年度目後半では,実際に予備電離装置の下流に発電機を設置し,凍結希ガスプラズマMHD発電へ向けた発電実験を予定している。この実験では既に高い発電性能が示されている高温希ガスプラズマMHD発電を基礎として検討するために,はじめ動作温度を9000Kとし,その後動作温度を徐々に低下させ,そしてそこに高周波電磁界を印加することで凍結希ガスプラズマMHD発電を実現させる予定である。また,この実験についてもこれまでと同様に数値解析を実施し,内部の詳細なプラズマ流体現象の考察を行う予定である。 なお,凍結希ガスプラズマMHD発電の検討については将来の実用化へ向けての指針を得ることを目的として,三年度目にまでわたって実施する予定である。
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