研究実績の概要 |
本研究の目的は、高齢者介護に関わるジェンダー構造を高齢者介護政策と家族介護の問題を包括的に明らかにすることである。具体的には、公的介護サービスのあり方と家族介護におけるジェンダー平等の関連を明らかにすることを目指している。前年度は、日本を含む先進国7カ国の高齢者介護政策の国際比較を行った。その結果、社会保障制度と家族介護のジェンダー構造との関連を捉える上では、支出規模と制度内容の両面での比較が必要であることが提案された。それを踏まえた上で今年度の進捗は大きく以下の2点である。 1点目に先進諸国のインフォーマルケアの状況に関する国際比較を行った。昨年度の成果では、社会保障制度がインフォーマルケアに与える機能として、ケア労働の社会化とケア費用の社会化という2つの方向性で公私関係を捉える必要性を論じた。その観点で各国の現状を比較した際に各国がどのように位置づけられるか、日本はどのように評価されるかを論じた上で、両方の観点で日本の現状は不十分であるという結論を得た。 2点目に、マルチレベルモデルによる介護政策とインフォーマルケアの関係の推定を行った。大陸ヨーロッパのサーベイ調査である、Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe (SHARE)のデータを取得し、ヨーロッパ12ヶ国の国際比較を行った。インフォーマルケアの提供を被説明変数にし、個人レベルでの制度利用と、国レベルの社会保障の寛大さを別々に考慮して推定した。日常生活に支障のある回答者をベースに親子ダイアドを作成し、それに国レベルを加えた3階層のマルチレベルモデルにより推定を行った。分析により、子から親へのインフォーマルサポートが提供される確率に対する、子の属性や状況、親の公的制度の利用状況への影響を確認した。
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