研究課題/領域番号 |
15J09491
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 正浩 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | コンピュータグラフィックス / アニメーション / ブレンディング |
研究実績の概要 |
本年度は主に,昨年度開発した曲率フローに基づく閉曲線ブレンディング手法における制約をなくすとともに,これまでのブレンディング手法では不可能であった滑らかなブレンディングを高速かつ数値的に安定に実現する手法を開発した.
一般に,平面上の任意の正則曲線は回転数と呼ばれる,接ベクトルの曲線に沿った積分値を2πで割った値で類別することができる事が知られているが,昨年までに提案してきた曲率エネルギーの勾配フローから計算される曲率フローを用いた手法では,異なる同値類に属する曲線間のブレンディングを実行することができなかった.そこで,回転数の差の個数分だけ曲線上に指定した点にオフセットを与える事により,擬似的に回転数を一致させる事を提案した.しかし,単純にオフセットを与えるだけでは滑らかな曲線間のブレンディングであっても遷移中に角ばった点が常に発生してしまうため,これを解決するために,曲率フローに曲率ネルギーの勾配フローだけでなく,曲率拡散フローを導入する事で,滑らかなブレンディングを実現した.これは近年提案されている関連研究でも解決されていなかった問題である. 実験により,回転数の差が大きく異なる場合でもブレンディング中で尖点(cusp)が生成する瞬間以外で常に滑らかに遷移するようなブレンディングが実現できた事を確認した.同時に,計算時間に関する評価も行い,関連研究では1つのブレンディング曲線を生成するのに1秒以上かかっていたものに対して,提案手法では,その100分の1以下の計算時間しかかからない事が示された. このようにわずかな計算時間でブレンディングが実施できる事は,閉曲線ブレンディング問題がアニメータを支援するツールであるという側面を持つ事を考えると極めて重要であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,昨年まで取り組んできた2次元平面上のアニメーションに関する2つのアルゴリズム,一筆書きアニメーションの中割り手法,閉曲線ブレンディング手法の対外発表や,手法の拡張を中心に取り組んだ. 前者については,成果を論文にまとめ,Visual Computing/グラフィックスとCAD 2016において発表を行った. 後者である閉曲線ブレンディングについては,昨年まで取り組んできた手法において制約となっていた,入力となる閉曲線の回転数が同じであるという条件に関して,その制約を取り払う手法を開発した.また,それに伴って生じるブレンディング中の角点の除去にも成功し,比較手法では実現不可能であった回転数が異なる場合における滑らかなブレンディングを高速かつロバストに実現する手法を提案した. これらの研究成果は研究コミュニティにより高い評価を受けており,2016年度情報処理学会山下記念研究賞を受賞した.受賞対象となった国内研究会における発表内容に加えて評価等を拡充させたものを論文にまとめ,情報処理学会論文誌ジャーナルへの推薦論文としての掲載が確定している. また,さらに上記の拡張を行った内容をCAD/CG分野の国際会議であるInternational Conference on Geometric Modeling and Processing 2017(GMP2017)において発表し,その紀要がElsevier社の国際論文誌Computer Aided Geometric Designに収録された. 以上のことから,本年度の研究実施状況に関しては,当初の想定以上の成果が挙げられていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,2次元において得られた曲率フローに基づくシェープブレンディングの知見を基に,3次元における2次元曲面のシェープブレンディング等への応用を行う予定である. また,これまでに提案してきた閉曲線レンディング手法についても,非アイソメトリックなブレンディングへの応用も可能にするための研究を行う予定である. 一筆書きアニメーションの中割り手法についても,国際会議や論文誌への投稿を目指し,改良を重ねる.
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