我々は強磁性マグノンを媒介として光とマイクロ波間でのコヒーレントな情報転送の実現を目指し研究を行ってきた。この二者間をコヒーレントに繋ぐインターフェイスの開発は、量子ネットワークや量子中継機の実現に必要不可欠である。強磁性マグノンは、光・マイクロ波それぞれとコヒーレントに結合させることが可能であるが、本年度、特に強磁性マグノンと光間の相互作用についての基礎的な研究が大きく進展し、新たな知見を得ることに成功した。 光-マイクロ波間のコヒーレントな変換は、3体(光が2モード、マグノンが1モード)の相互作用を用いることによって実現している。しかし、光とマグノンの相互作用の中にはより高次の相互作用が存在する。印加磁場と照射する光の波数ベクトルを平行にした場合、4体(光が2モード、マグノンが2モード)の相互作用が現れることが複素誘電率テンソルの形から予想された。そこで球状強磁性体中の静磁波モードと、細く絞ったレーザー光を用いてブリルアン散乱を観測したところ、コヒーレントな4体散乱の存在を実証することに成功した。観測された信号の中には、異なる2つの静磁波モードの差周波数分だけ周波数変調されたブリルアン散乱光が存在した。この結果は、適当な周波数差をもつ2色のレーザー光を球状強磁性体に照射することにより、あるエネルギーの高い静磁波モードからエネルギーの低い静磁波モードへと変換することが可能であることを示唆しており、新しいマグノン制御の手法に繋がると期待している。これらの結果について現在論文執筆中である。
|