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2015 年度 実績報告書

ナノ秒スケールの高時間分解能観測で迫るパルサーの巨大電波パルス

研究課題

研究課題/領域番号 15J09510
研究機関東京大学

研究代表者

三上 諒  東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワードパルサーの巨大電波パルス / 電波広帯域スペクトル
研究実績の概要

パルサーは強磁場(10の8~15乗ガウス)を持ち高速(数ミリ秒から数秒)で自転する中性子星で、パルサーからは非常に規則的なパルス放射が観測される。パルサーの放射機構、つまり星の回転エネルギーを放射エネルギーに変換する機構はいまだ解明されていない。我々はこの課題に迫るべく、いくつかのパルサーにおいて電波領域で観測される、通常パルス強度の数千倍を超える巨大電波パルス(Giant Radio Pulse, 以下GRP)に注目した。GRPはその強さゆえ、畳み込み(重ね合わせ)の必要なくそのパルス波形を得ることができるため、パルス発生機構に対する情報をより直接的に得ることが期待できる。
我々は平成27年度、その前年に行った国内4地点の電波望遠鏡を用いたカニパルサーGRPの同時観測のデータより、GRPフラックスの観測周波数依存性(スペクトル)を取得した。先行研究と比べて最も広帯域、かつ先行研究と比べても多い3000個以上のGRPサンプルを取得し、統計的調査を実施した。我々は、大部分のGRPスペクトルは0.3-2.2GHzの範囲において単純なべき関数で表せること、べき指数は広範囲に分布するが、多くが通常電波パルスと比べてハードなスペクトルを持つ可能性が示唆されるという結果を得た。また、我々はGRPが暗い(弱い)ほど0.3-2.2 GHzでのスペクトルはハードになる可能性も指摘した。
本研究は、GRP発生機構への手掛かりを与え、また最近発見されたFast Radio Burst(以下FRB)という現象に対しても示唆を与えるかもしれない。FRBはその起源も未解明の、持続時間がミリ秒程度の電波バースト現象であり、その候補の一つとして銀河系外のパルサーからのGRPの可能性が論じられている。FRBがGRPによるものかを区別するための判断材料としても、スペクトルの情報は重要であり、本研究の意義は大きい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

GRPの電波広帯域スペクトルの調査のため、前年度に得た多地点電波同時観測データの解析に積極的に取り組んだ。また、今年度に実施した追加観測スケジュールの立案等も主体的に行った。研究の成果は博士論文、日本天文学会春季年会での口頭発表という形でまとめられている。結果をまとめた論文も平成28年度中に投稿・出版が完了する予定である。
これらより、現在までの研究課題の進捗はおおむね順調であると判断した。

今後の研究の推進方策

「研究業績の概要」の項で示した成果は、より多くのGRPサンプルを集めた観測、また、観測周波数帯域を更に広げた観測により発展させることができると考えられる。特にカニパルサーでは約4GHzを超えた領域ではパルスの出現位相などの性質が変わることが知られており、4GHzを挟んでスペクトルを調査することで何らかの特性を引き出せるかもしれない。
また、今回は各GRPに存在するナノ秒スケールの激しい強度変動(微細構造)は簡単のため無視して、GRPの積分エネルギーによってスペクトルを評価した。GRPはナノ秒スケールの多数の微細構造により構成されており、微細構造の解析からはGRP発生機構へのより直接的な手掛かりを得られる可能性がある。したがって、スペクトルとGRP微細構造との関連を調査することも今後の重要な課題の一つとして考えられる。
さらに、GRPはカニパルサー以外にも十数個のパルサーで観測されている。それらのパルサーには、推定される年齢や磁場強度などがカニパルサーと大きく異なるものもある。GRPのスペクトルを各パルサーで比較することも次の課題として考えられる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] カニパルサー巨大電波パルスのStacking解析2016

    • 著者名/発表者名
      三上 諒
    • 学会等名
      日本天文学会2016年春季年会
    • 発表場所
      首都大学東京
    • 年月日
      2016-03-16 – 2016-03-16

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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