研究課題/領域番号 |
15J09533
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
森 真美子 北里大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | Rac / small GTPase / 低分子量 GTP結合タンパク質 / RacGAP / ARHGAP22 |
研究実績の概要 |
Rhoファミリー低分子量G蛋白質 (RhoGTPase)は、アクチン細胞骨格の再編成を通して細胞の形態や運動を制御する因子で、細胞内において分子スイッチとして働いている。細胞内にはRhoGTPaseの活性化と不活性化を調節する因子が多数存在する。近年RhoGTPaseの不活化因子であるGAPが積極的に細胞の形態や運動を制御していることが明らかとなり、その重要性が認知されるようになってきた。これまでRhoGTPaseの1つであるRacに特異的なGAPとして機能するARHGAP22は、病理学的機能の報告はされているものの生理学的機能は不明である。そこで、本研究ではARHGAP22の生理学的機能を解明する事を目標としている。
[本年度の成果] これまでの成果として、ARHGAP22は細胞内においてエンドソームに局在し、RacGAPとして葉状仮足の形成と細胞伸展を抑制する働きがあることが示された。またARHGAP22が必要に応じてエンドソームから細胞膜に移行してRacを不活化することが示唆された(Mori et al ., PloS one vol.9 issue6 e100271)。ARHGAP22のエンドソームへの局在化はそのCCドメインで制御されていることから、おそらくCCドメインを介した局在制御蛋白質の存在が考えられる。 そこで、エンドソームへの局在化を欠損させた変異型ARHGAP22を作成しその細胞内におけるRacGAP活性を野生型ARHGAP22と比較した。その結果、変異型ARHGAP22は野生型ARHGAP22と同様に細胞膜において活性型Racと共局在し、さらには細胞基質上での細胞伸展やEGF刺激誘導性の葉状仮足形成を阻害することが明らかになった。またこのとき変異型ARHGAP22は野生型ARHGAP22に比べて有意に抑制していることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はRacの不活化因子であるARHGAP22が、1)細胞膜でRacGAPとして働く主にがエンドソーム局在する意義、2)エンドソームでの局在化が細胞内のどの分子によって制御されているか、3)結合分子が」ARHGAP22の機能に与える影響、というの3課題を中心に研究を行っている。1)については本年度の研究により明らかになり、2)は現在条件検討しながら解析中であり、3)は1)の結果からおそらく局在決定に伴う抑制効果が見込まれると示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、ARHGAP22結合タンパク質を同定し、細胞内におけるARHGAP22の機能解析をより詳細に進め、細胞内輸送におけるARHGAP22の輸送制御メカニズムと細胞運動のメカニズムを明らかにしたい。そこで今後、局在の異なる変異体を用いたRacに対するGAP活性の評価やそれに伴う運動への影響をタイムラプス顕微鏡等で解析し、細胞運動への効果を比較することでエンドソームへの局在化の意義をより詳細に解析する予定である。
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