研究課題/領域番号 |
15J09551
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
六車 共平 東京薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
キーワード | ペプチド / 抗体薬物複合体 / プロドラッグ / Plinabulin |
研究実績の概要 |
平成27年度では、大きく分けて2つの研究を展開した。1つ目が平成27年度の計画書に記載したZ33ペプチドの構造-抗体結合能相関研究である。抗体結合ペプチドZ33の分子モデリングを行い、抗体結合への関与の薄いアミノ酸残基を同定した後、Z33の結合への関与の薄いアミノ酸領域であるループ部位をジスルフィド結合に置き換えたペプチドを設計し、フラグメントペプチドを合成した。しかしながら、これらのペプチドのジスルフィド架橋反応は溶解性、反応性に難点があり、効率的には反応が進行しなかったため、現在も反応条件の検討中である。 次に2つ目として、平成29年度の計画書に記載した抗がん剤(Plinabulin)とZ33ペプチドの架橋反応を検討した。従来のプロドラッグ合成法(Yakushiji, Muguruma et al, Chem. Eur. J., 2011)では反応溶媒に対する溶解性の異なるPlinabulinとZ33の架橋体は合成できないことが明らかとなったため、平成29年度の計画を先に実施することとした。その結果、我々の研究室で独自に開発した固相担持型ジスルフィド架橋試薬を応用した新規2段階反応により、目的の架橋体(Plinabulin-SS-Z33)を29%の単離収率で合成することに成功した。続いて、合成した架橋体のCDスペクトルによる二次構造解析、表面プラズモン共鳴法による抗体結合能評価したところ、架橋体はZ33ペプチドと同様に抗体結合能を有していることが示唆された。in vitroにおける殺細胞活性評価において、架橋体は抗体存在下、抗原発現細胞選択的な殺細胞活性を示した。すなわち、非共有結合的ではあるが抗体薬物複合体を形成していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は計画書に記載しているように、Z33ペプチドの分子モデリングにより抗体結合への重要性の薄い残基を推測し、合成する抗体結合ペプチドを設計した。結合に関与の薄いループ構造をジスルフィド結合へ変換したZ33ペプチド誘導体合成を試みたものの、ジスルフィド架橋反応が効率良くは進行しなかった。そのため、Z33ペプチドの構造-抗体結合能相関研究に関してはあまり大きな成果は得られていない。しかしながら一方で、平成29年度の計画書に記載したZ33ペプチドと抗がん剤の架橋体合成において大きく進展した。抗がん剤「Plinbulin」とZ33ペプチドの架橋体合成において、これら化合物の溶解性が大きく違い、液相中でのカップリング反応が困難であったため、固相担持型ジスルフィド化試薬を用いる新規手法を開発し、Plinabulin-SS-Z33架橋体を合成した。加えて、合成した架橋体に関し、CDスペクトルによる二次構造解析、表面プラズモン共鳴による抗体結合能評価、細胞系における殺細胞活性評価を行った。すなわち、今後、合成する共有結合型のADCの評価系を確立できたと言える。また、現在、本成果(PlinabulinとZ33の新規架橋体合成、非共有結合型の抗体薬物複合体としての殺細胞活性)に関して論文を投稿中である。そのため、平成27年度の進捗はおおむね順調であると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き抗体結合ペプチドZ33の構造-抗体結合能相関研究を継続する。Z33ペプチドの分子モデリングから抗体との結合に深く関与するアミノ酸残基を、非天然アミノ酸に置換し、抗体結合能の向上を図る。合成したペプチドは表面プラズモン共鳴法により、抗体結合能を評価する。また、抗体上へのより強固な薬物担持をめざした誘導体合成を行う。すなわち、抗体-Z33ペプチド間の共有結合形成を目的とし、マイケルアクセプターやハロゲン化アルキルなどの反応性基を側鎖に有する非天然アミノ酸を Z33誘導体配列中に組み込む。類似の抗体結合ペプチドにおいて、光反応性基を導入することで共有結合を形成する研究(Bioconjugate Chem. 2014, 25, 1709)も実施されているため、この研究も参考にしたい。
|