表面にグルコースリガンドを導入することで血液脳関門表面のGLUT1を標的化するポリイオンコンプレックス(PIC)ミセル型ナノキャリア(Gluc(6)/m)をマウスに投与、同時に血糖値の制御を行うことで血中から血液脳関門(BBB)を超えた脳実質に送達し、in vivoでの動態評価を行った。GLUT1の局在変化を誘起するため24時間絶食したマウスの尾静脈より蛍光標識したGluc(6)/mを投与、30分後に20%グルコース溶液を腹腔内投与すること血糖値を上昇させ、任意の時間に各組織への分布を定量したところ、Gluc(6)/mの脳への集積効率が増大した。血糖操作によるナノキャリアの集積の増大は脳でのみ生じ、他の組織では確認されなかった。更にGLUT1阻害剤phroletin投与によって脳への集積が減少し、Gluc(6)/mがGLUT1を介して脳へ送達されたことが示された。更にin vivo共焦点レーザー蛍光顕微鏡によるリアルタイム観察によって、Gluc(6)/mはグルコース溶液投与後の血糖値上昇と呼応してBBBを突破し脳実質へ移動することが確認された。レーザー蛍光顕微鏡観察により、Gluc(6)/mは大脳表層から200 μm以上の細胞成分の多い深部に分布、さらにニューロンの共局在が観察された。以上の結果をNature Nanotechnology誌に投稿した。 次に、サイズの大きなグルコースリガンド導入PICベシクル型ナノキャリア(Gluc(6)/some)を新規調製し、ナノキャリアのサイズの効果の検証を行った。Gluc(6)/someを同様の方法でマウスに投与したところ、血糖操作よって脳への集積が増大した。脳実質でのGluc(6)/someの分布は、実質内に広く分布したGluc(6)/mと異なり血管周辺にのみ局在し、サイズ依存的な障壁の存在が示され、脳へのナノキャリアの送達におけるサイズ制御の重要性が明らかになった。
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