本研究課題では、骨格筋由来のマイオカインである「Irisin」やその関連因子に着目し、Irisin の分泌増大に効果的な運動条件を明らかにすることを目的とした。 平成 28 年度は、運動を取り巻く環境を含めた検討、すなわち高温環境や寒冷環境を利用することで運動強度の高い運動をせずとも Irisin および Irisin と同様に白色脂肪細胞の褐色化を促す「FGF21 (繊維芽細胞増殖因子 21)」の産生量を効率的に増加させることができるか否かを検証した。また、Irisin に関連するこれまでの研究ではあまり検討されてこなかった運動後の血液濃縮の影響も考慮し、解析を行った。 運動前後の血漿 Irisin 濃度は、各温度条件 (高温: 34 ℃、通常温: 24 ℃ および低温環境下: 15-19 ℃) で有意な変化は認められなかった。血漿 FGF21 濃度は運動終了 1 時間後にいずれの条件でも有意に上昇したものの、運動後における血漿 FGF21 濃度の上昇の程度には条件間に有意な差は認められなかった。運動前から運動終了 3 時間後までの濃度曲線下面積 (AUC: Area under the curve) 値は、高温条件が低温条件に比べ高値を示す傾向がみられたものの、有意な高値を示すまでには至らなかった。 以上の結果は、血漿 Irisin および FGF21 濃度が、発汗量の増加するような高温環境下や震えの生じない程度の低温環境下での運動では上昇しないことを示唆するものである。
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