研究課題/領域番号 |
15J09772
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三目 直登 東京大学, 大学院 (工学系研究科), 特別研究員(DC2) (10808083)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 数値解析 / 耐津波設計 / 流体構造連成 / 有限要素法 / 粒子法 / 並列計算 |
研究実績の概要 |
研究員はこれまでに、粒子法と有限要素法を用いた流体構造連成解析手法の開発・精度検証と、粒子法における壁境界モデルの高精度化を行ってきた。これによって、津波等の災害が構造物・人工物に与える影響を従来よりも容易にかつ高精度に解析する枠組みを提示したが、これらの手法はきわめて高い計算コストを要するという問題があった。 平成 27 年度は、5 月から翌 3 月までの間、米国 Notre Dame 大学の研究グループである Computational Hydraulic Laboratory (CHL) に滞在し、北アメリカ全域やアジア地域全体等の非常に大規模な範囲の波を解析する手法についての研究を行った。CHL では、ある種の仮定の下で流体の支配方程式の次元を3次元から2次元に低減した計算コストの低い浅水長波方程式を用い、高潮等の波を大域的に解く研究を行っている。また、従来の有限要素法を理論的に拡張した Discontinuous-Galerkin 有限要素法 (DG-FEM) を用いた大規模並列ソルバーの実装が行われている。またその拡張として、高精度な波の2次元モデルである Boussinesq-type モデルの研究開発が行われ ていた。研究員は、CHLで研究開発されている Boussinesq-type model の一種である pressure-Poisson Boussinesq-type (PPBOUSS) モデルの開発・検証および DG-FEM を用いた実装を目的としたプロジェクトに参加し、PBOUSS モデルの DG-FEM による 2 次元解析と粒子法による 3 次元流体解析との片方向連成モデルの開発と検証を行った。また、これらの成果を国際会議等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究員は米国 Notre Dame 大学に滞在し、共同研究者のグループと協調して大域的な波のシミュレーションコードの実装と検証に加え、これまでに開発してきた連成解析とスムーズに連結させることに関して成果を得た。新しい環境に適応するのに少し時間はかかったものの、本年度の研究成果は本研究の主題である人工物・構造物の耐津波設計を実現するにあたって必要不可欠な要素であり、当初計画した通り順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまでに、沿岸部に立地する重要構造物等の耐津波設計に資する数値シミュレーションのための数理モデルの開発および検証を行い、一定の成果を得た。 今後の課題として、これまでに開発してきた数理モデル、具体的には、流体構造連成モデルおよび波の片方向連成モデルを基にした実用的な解析システムの開発が挙げられる。本研究で開発を行ってきた数理モデルは、既存の大規模並列ソルバーを容易に活用できるというメリットがある。本研究では既存の大規模並列ソルバーとして、構造解析に対しては ADVENTURE_Sollid を、自由表面流れ解析に対しては HDDM_EMPS を、そして2次元の波モデルに関しては DG-SWEM を用いる。これらの間で情報の受け渡しを行うコードである coupler を実装し、スーパーコンピュータ等の並列計算機上で動作する実用的な解析システムの開発を行う。 また、開発した並列解析システムの精度および妥当性の検証のため、津波再現水槽での実験結果との比較を行う予定である。
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