本研究は、沿岸部に立地する重要構造物や人工物の耐津波設計に資する数値シミュレーションを実現するために、波と構造物の移動・変形が相互作用する3次元流体構造連成現象の数理モデル開発および精度検証を行ってきた。また、計算コスト削減のため、波の2次元モデルを導入した2次元/3次元 (2D-3D) 波モデルの開発を行い、基礎的な数理モデルを構築した。 最終年度である本年度は、これまでに開発した数理モデルを基に、並列計算機を使用した大規模シミュレーションを可能とするためのコード開発を中心とし、それらの精度検証および妥当性検証を行った。 流体構造連成モデルに関しては、有限要素法による並列構造ソルバーである ADVENTURE_Solid と、粒子法による並列自由表面流れソルバーである HDDM_EMPS を用いた。次に、流体ソルバーと構造ソルバー間で物理量の受け渡しを行うためのコードを開発した。これによって並列流体構造連成解析が可能となったため、これを用いて、下面が拘束された弾性体にダムブレイクによる波が衝突する問題を解析し、定性的に妥当な結果が得られることを確認した。 2D-3D 波モデルに関しては、3次元計算には既に述べた HDDM_EMPS を用い、2次元計算には、不連続 Galerkin 有限要素法による並列浅水長波方程式ソルバーである DG-SWEM をベースとし、より高精度な解析を実現するためのモジュールを開発した。また、この2次元解析システムの結果から2D-3D 境界面の動きをトラッキングするコードを実装し、並列 2D-3D 片方向連成解析システムを実現した。また、開発した片方向連成解析システムの精度検証を実施するために、京都大学防災研究所で行われた津波再現水槽Hy-TOFUを用いた実験を再現する解析を行い、波高に関して実験と良い一致を得た。
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