近年、有機エレクトロニクス分野の研究が盛んに行なわれている。その発展には、素子に電気を効率的に流すための高い電荷輸送特性をもつ機能性有機材料の開発が極めて重要である。本研究では、材料開発において分子の「形」に着目し、プロペラ型構造をもつトリアリールアミンの二箇所を酸素原子で架橋することで、平面から少しだけねじれた「準平面型」の骨格を開発した。この準平面型骨格を用いた機能性有機材料の開発を目的としている。 今年度の研究では、準平面型骨格をもつ塗布型の材料を開発し、近年注目を集めているペロブスカイト太陽電池の正孔輸送性材料への応用に取り組んだ。塗布型の正孔輸送性材料として、アズレンやビフェニル骨格に長鎖アルコキシ基をもつ準平面型骨格を複数導入したシート型の分子を開発した。これらを用いてペロブスカイト太陽電池を作製し、素子特性を評価した結果、アズレンに四つの準平面型骨格を導入した分子を正孔輸送性材料に用いることで、Spiro-OMeTADと呼ばれる標準材料を用いた場合と比べて最大 1.2 倍も高い光電変換効率が得られることを見出した。さらに、一連の正孔輸送性材料の基礎特性と太陽電池特性とを比較することで、正孔輸送性材料に必要な高い光電変換効率を得るための特性を明らかにすることにも成功した。本研究により、準平面型構造を用いた塗布型の正孔輸送性材料の有用性を実証するとともに、ペロブスカイト太陽電池の高効率化に対する材料の設計指針を明確に示すことができた。
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