研究課題/領域番号 |
15J09837
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川村 弥 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 電力変換器 / 高圧モータ駆動 / マルチレベル変換器 / インダクタ / 電流制御 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,現在入手可能な半導体パワーデバイスの使用を前提とした次世代マルチレベル変換器を用いた高圧・大容量交流モータ可変速駆動システムの基盤技術を確立することである。本課題においては,次世代マルチレベル変換器として現在世界的に注目を集めているモジュラー・マルチレベル・TSBC変換器に着目した。本変換器(以下,TSBC変換器)は,従来の高圧モータ駆動変換器と異なり,原理的に変圧器なしで6.6kV以上の高圧モータの可変速駆動が実現できるため,システムの小型・軽量化・低コスト化が期待できる。 本年度は,TSBC変換器の主回路部品のうち,重量・体積が比較的大きな割合を占めると予想されるインダクタについて,その重量・体積低減手法について検討を行った。その結果,考案した三脚鉄心ベースの新しい巻線構造のインダクタを使用することで,制御性をほぼ同等に維持したまま,従来方式と比較して大幅にその重量・体積を低減できることを明らかにした。さらに,現有設備の400V,15kW実験室ミニモデルに適用するインダクタを設計・製作し,実際に接続・動作させることによって,提案方式の有効性・妥当性を実証するとともに,重量・体積低減効果を確認できた。 本研究の成果は,TSBC変換器の実用化を考慮する上で,その小型・軽量・低コスト化に大きく貢献する。この成果について,国内学会および国際会議においてそれぞれ口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」で記述したように,研究はおおむね予定通り順調に進捗している。提案方式の着想・設計から始まり,業者への発注・納入,実験装置への組み込みおよび動作試験まで順調に進展した。現在,従来方式との電流制御性能を比較して,提案方式の制御性能が大幅に低下していないことを立証するための試験準備を行っている。この試験を完了することによって,提案方式の有効性がより明確になる。 今後,これらの試験結果をまとめ,当該研究分野で世界で最も権威ある米国電気電子学会産業応用部門論文誌(IEEE Transactions on Industry Applications)に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,上記の追加検討・追試験とは別に,本研究の主目的である高圧モータ駆動システムの小型・軽量化・低コスト化に関連して,主回路の直流コンデンサ静電容量の低減と変換器電力損失低減の両立を検討する。既に検討したインダクタと同様に,直流コンデンサもまた変換器全体のうち無視できない重量・体積を占めることが予測されている。したがって,静電容量の低減は小型・軽量化・低コスト化に直結する。電力損失低減もまた,パワーデバイスに実装するヒートシンクなどの冷却装置の小型・軽量化・低コスト化に直結する。静電容量の低減と電力損失低減の両立は,制御法の工夫,特に複雑さゆえこれまで検討が不十分な新しい変調方式に着目する。 上記内容に関連して,電力損失評価のため,高精度な効率評価シミュレーションモデルの構築を目指す。これにより,制作が困難なMW級実機レベルについても信頼性の高い損失評価が可能になる。
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