電力システムや金融システムにおいて、時系列データから大きな変動の検出を行うための数理的手法の開発を行った。
動的ネットワークマーカーと呼ばれる手法とクープマンモード分解と呼ばれる手法を適用し、性能を評価した。また、クープマンモード分解に関する数理的な問題点を明らかにし、手法の拡張を行った。さらに、変化の直後に変化が起こったことを検出することも社会的意義が高いため、予兆を検出するだけではなく変化の直後に変化の検出を行えるかどうかを検証した。 また、電力システムでの予兆検出手法の知見を金融システムに適用し、変化点の検出が行えるかを数値的に示した。特に、動的ネットワークマーカーにおいては、ドミナントグループの推定が必要であり、ドミナントグループを推定する手法を2つ提案した。これにより、金融システムにおいても一定の範囲内で変化点の検出が行えることを明らかにした。 さらに、電力系統のネットワーク特性に関する考察を行った。特に、ノードのロバスト性を定量化する手法が2つあることを説明した。1つ目は電力の変動に対するロバスト性を定量化する手法であり、2つ目は位相の変動に対するロバスト性を定量化する手法である。先行研究では、この2つの手法のいずれかしか用いられておらず、手法間の関係が明らかでなかった。同じネットワーク構造の電力系統で比較を行ったことで、両者の手法が大きく異なるロバスト性の定量化を行っていることを明らかにした。先行研究においてロバスト性をノードごとにしか求めておらず、ノード間の接続関係を考慮していないことの問題点を明らかにした。ネットワーク科学において、複雑ネットワークにおけるノードの接続関係に関する様々な性質が研究されているが、中でもネットワークモチーフというのは非常に重要である。ネットワークモチーフが電力系統のロバスト性とどのように関係しているかを数値的に示した。
|