研究課題/領域番号 |
15J09936
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 友樹 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | リボヌクレオペプチド / RNAライブラリー / ペプチドライブラリー / スクリーンニング / 人工酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、基質選択性を有するRNA基質結合場と非天然の反応活性中心が協同的に働くようにRNA-ペプチド複合体(RNP)を構築するという、新しい酵素作製原理の開発を目的とする。RNPの三次構造情報は限られているため、様々な三次構造を有する非天然活性中心導入RNPライブラリーを構築し、触媒活性を指標にしたスクリーニングを行うことで、目的のRNPを獲得する。 RNA、ペプチドそれぞれをライブラリー化することにより、その複合体であるRNPライブラリーの多様性は容易に増大することができる。RNAライブラリーには、これまでに森井らが獲得し報告しているATP結合性RNPリセプターライブラリーのRNAライブラリーを採用した。このRNPリセプターはATPのアデニン部位を認識し結合するが、糖およびリン酸部位は結合に関与しないことがわかっている。ペプチドライブラリーには、RevペプチドのN末端に様々な構造や長さのペプチドリンカーを介して反応活性中心として、DMAP、ヒスチジンおよび亜鉛錯体をそれぞれ導入した。 スクリーニングでの触媒活性評価を行うため、標的反応の簡便な評価系を構築する必要がある。そこで標的分子としてアデニン部位を有しており化学反応前後で大幅に蛍光強度が増大するアデノシン誘導体(5’-デオキシ-5’-(ウンベリフェリルブチレート)アミドアデノシン)を設計・合成した。この基質を利用することで、反応の進行を定量的に評価することが可能となった。 RNAライブラリーとペプチドライブラリーを組み合わせて、多様な三次構造をとる反応活性中心導入RNPライブラリーを構築した。合成した基質の加水分解反応を標的としてスクリーニングを行い、添加することで反応が加速されるRNPが存在していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、当初の予定通りATP結合性RNAライブラリーの構築、およびN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、亜鉛-ジエチレントリアミン錯体などの触媒分子を様々なリンカーを介してN末端に修飾した非天然活性中心導入Revペプチドライブラリーの構築を行った。さらにこれらを組み合わせてRNPライブラリーを構築し、エステル加水分解反応を標的反応として加水分解活性を指標にしたスクリーニングを行う条件を確立した。当初は、加水分解生成物が特徴的なUV吸収帯をもつp-ニトロフェニルエステルを含むアデノシン誘導体を標的基質として用いることで、RNPの触媒活性スクリーニングを行うことができると考えていたが、同基質はRNPや反応活性中心の非存在下であっても水中で不安定であり、比較的エステルが安定な酸性側の緩衝溶液中では反応生成物の吸光係数が大幅に低下することがわかった。そのため吸光度測定により生成物の定量を行うことができなくなり、スクリーニングに用いるのは難しかった。そこで、加水分解生成物が蛍光を発するウンベリフェリルエステルを含むアデノシン誘導体を新たに設計、合成した。この基質を用いることで酸性側の緩衝溶液中でもプレートリーダーを用いた分光学的スクリーニングが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに多様な構造をもつ非天然活性中心導入RNPライブラリーの構築とスクリーニング系を確立したため、エステル加水分解活性を有するRNPを効率的に選び出すことが可能になった。平成28年度には、スクリーニングにより触媒活性のあるRNPを選択する。得られたRNPをもとにして、RNAの一部にランダムな塩基配列を導入することでRNPの2次ライブラリーを構築する。2次ライブラリーのスクリーニングを行うことによって、よりエステル加水分解に適した三次構造を有するRNPを獲得できると期待している。これらによってRNPを用いた酵素作製方法論の妥当性を検証する。 また、RNPリセプターをもとに段階的に酵素を作製する方法以外に、触媒活性を指標にした進化工学的手法により酵素活性を持つ分子を選択する方法も考えられる。ランダムなRNA配列を含み、ジエチレントリアミンやアザクラウンといったキレート分子をRevペプチドのN末端に導入したRNPライブラリーに対して、まずは樹脂上の基質との結合反応を行う。続いて、非結合性RNPを洗浄により除いた上で、亜鉛などの金属を添加して加水分解活性を持つ錯体をRNP上で形成させる。基質と活性中心が適切な空間配置をとるときにのみ加水分解が起こりRNPが溶出される。このサイクルを繰り返すことにより加水分解活性を持つRNP酵素を獲得する。HPLC解析および質量分析等によって触媒活性を評価し、RNPリセプターへの触媒機能付加により作製したRNPと比較する。
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