本研究ではRNAとペプチドの複合体(RNP)を基本骨格として、基質選択性を有するRNA基質結合場の近傍に触媒分子を導入することで基質と触媒分子の近接効果により触媒活性を発揮するRNPを作製するという、新しい酵素作製原理の開発を目的とした。基質結合性RNP(RNPリセプター)には詳細な三次構造情報がないため合理的な設計が難しい。そこで様々な三次構造をもつ触媒分子を導入したRNPリセプターライブラリーを構築し、それらの触媒活性を指標にしたスクリーニングを行うことで触媒活性を発揮するRNPの獲得を目指した。 RNPを構築するRNAサブユニットとペプチドサブユニットはそれぞれ個別のライブラリーを構築できる。構築した各ライブラリーを組み合わせてRNPを形成することで、分子種数が飛躍的に増大したRNPライブラリーを簡便に構築することが可能である。森井らが報告したATP結合性RNPリセプターには多様な三次構造、基質親和性をもつRNAサブユニットが存在することに着目し、ATP結合場を有するRNAライブラリーとして用いた。また、RevペプチドのN末端に加水分解触媒として機能すると期待できるジメチルアミノピリジン、ビピリジン、そしてヒスチジンを様々なペプチドリンカーを介して修飾し、構造多様性を持つ触媒分子修飾ペプチドライブラリーを構築した。さらにサブユニットライブラリーを組み合わせることで、簡便に触媒分子が導入された609種類のRNPリセプターを作製した。 加水分解反応前後で蛍光強度が大きく変化するアデノシン誘導体(5’-デオキシ-5’-(ウンベリフェリルブチレート)アミドアデノシン)を標的基質として用い、加水分解活性を指標にしたスクリーニングを行うことで、構築したRNPライブラリーの中から触媒活性を有するRNPを獲得することに成功した。本方法論は汎用性の高い新規酵素作製方法論になると期待できる。
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