膵島移植では,分離過程に伴う血管構造の喪失により,移植膵島の生着効率が極めて低いことが重大な臨床的解決課題とされている.移植膵島の血管新生を促す技術として,膵島を間葉系細胞と混合移植する手法が提案されているが,早期の血管再構築は達成されていない.本研究では,独自の細胞集合メカニズムを移植膵島の前処理工程に応用することにより,試験管内において血管網を有する膵島を創出し,移植後の生着率向上を目的とした.その結果,ヒトおよびマウス膵島,血管内皮細胞,間葉系細胞を至適条件下で共培養することにより,細胞自律的に血管構造が付加された膵島(血管化膵島)を創出することに成功した.さらに,頭部観察窓への血管化膵島移植により,機能的なヒト血管網が極めて早期(48時間)に再構築することによる移植後の生着率を著しく向上させた.血管化膵島を劇症1型糖尿病モデルマウス腎被膜下へ移植することにより,臨床的に有意義とされる従来の移植手法に比べ,レシピエントの生存率が大幅に改善された.本研究により,過去報告されてきた膵島と細胞の混合移植時よりも,血管再構築に要する期間を短縮することに成功した.この結果は,従来報告のあるような血管新生因子の分泌などを介した間接作用を越えて,移植した血管内皮細胞がホスト血管へ組み込まれ直接的な血管再構築が達成されたためと推測される.将来的に治療効果に優れた革新的な膵島移植治療が実現できるものと期待される.
|