本年度は、研究目的に記したように分散不均一モデルの提案とその利用および条件付リスク尺度の提案を中心として研究を行った。前者に関しては、パラメータの一致性を含む漸近的な結果を非常にクリアな形で得る事ができ、その結果を利用して小地域推定量のリスク評価法も確立することができた。後者に関しては、実データ分析を通して申請者が提案したリスク尺度を利用するべきであることを示唆する結果を得ることができた。したがって、どちらの課題に関しても理論的かつ実用的に有用な結果を得ることができたと言える。さらに、両課題ともに学術論文としてまとめあげ、最終的に著名な国際査読雑誌に掲載されるまでに至った。また前者の分散不均一モデルに関しては、試行錯誤の中でさらなる改良モデルを生み出すことができ、学術論文としてまとめあげ現在国際査読誌に投稿中である。 また、8月の長期休暇を利用して、カナダのカールトン大学のJ.N.K.Rao教授のもとへ2週間ほど研究滞在を行った。Rao教授は小地域推定の先駆者の1人であり、非常に有意義な議論をすることができた。申請者個人の研究内容について有益なコメントをもらえただけでなく、議論の中から解くべき重要な課題を発見することができ、現在共同研究を行っている。 本年度は、研究計画に記した通り、研究に関連する周辺知識の獲得にも力を注いだ。その結果、混合モデルや小地域推定において解くべき課題や、それに対する他分野の手法を用いたアプローチなど、今後研究を進めていくべき新たな方向性も見えてきた。
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