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2016 年度 実績報告書

本州北端燧岳における速効地熱探査のための地熱地球科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 15J10106
研究機関弘前大学

研究代表者

鈴木 陽大  弘前大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワード地熱 / 青森 / むつ燧岳 / pH / 安定同位体 / 貯留層 / 温泉
研究実績の概要

本研究の目的は、本州北端燧岳地熱地域において、地熱の三要素である熱、水、貯留層について把握することで、地熱開発促進に貢献することである。
2016年5月に、本州北端燧岳地熱地域が青森県内における有望地熱地域であることを示した論文が、査読付きの国際誌に受理された。これによって、本地域の重要性が再認識されるとともに、熱の存在を確認することに成功した。
本州北端燧岳地熱地域における地下水循環を把握する目的で、降水の安定同位体の分析を毎月実施した。分析する降水は、およそ標高100m間隔で採取し、標高効果の把握も試みた。これにより、本地域における降水の安定同位体の季節変動および標高効果の把握に初めて成功した。また、温泉、湧水、沢水、河川からなる地表水の分析も完了しており、かねてより研究目的としてきた稠密安定同位体分布図を作成した。稠密安定同位体分布と降水モニタリングの結果から、本地域の地表水の多くは、天水起源であり、局所的な水の循環系を形成している可能性が示唆された。また、本地域内唯一の温泉である、大赤川温泉の涵養域の推定に成功した。
本研究では、温泉等の地表面で得られるデータのみを使用して、簡単に貯留層位置を推定可能にする新探査手法の開発を進めてきた。2016年度に実施した研究では、これを稠密pHマッピングという形で、目的達成に大きく近づくことができた。稠密pHマッピングは従来手法と比べて、極めて安価かつ迅速に実施可能であるという利点を持つ。
現地調査によって、既存資料にない断層露頭を発見した。また、基盤をなす頁岩層の走向・傾斜より、基盤がドーム状構造を形成している可能性が示唆された。これらのデータや、前年度発見したむつ燧岳東麓断層を中心に、本地域における地質学的新知見が多く得られているため、地質図の作成を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2016年5月に、本州北端燧岳地熱地域が青森県内における有望地熱地域であることを示した論文が査読付きの国際誌に受理された。本論文では、活動度指数分布が火山フロントや地震波低速度域とよく一致することが示されるとともに、複数の熱水地化学温度計との比較によって、活動度指数が地熱資源の把握に有効な手法であることが示された。
前年度から計画的に降水の採取を続けており、本州北端燧岳地熱地域における降水の安定同位体の季節変動および標高効果の把握に初めて成功した。また、前年度の調査で山中の把握をおおむね完了させていたため、2016年度はより円滑に現地調査を実施することができた。その結果、予定より多くのデータを取得することができ、かねてより目的としてきた稠密安定同位体分布図の作成に成功した。
本研究の目的の一つは、Geodepthmeterという、温泉等の地表面で得られるデータのみを使用して、簡単に貯留層位置を推定するための新探査手法を開発することである。2016年度に実施した研究では、これを稠密pHマッピングに形を変えて、目的達成に大きく近くことができた。稠密pHマッピングはGeodepthmeter同様、地表面で得られるデータのみを使用して、貯留層位置を推定するための新手法である。さらに、稠密pHマッピングはGeodepthmeterに比べて、安価かつ迅速に実施可能であるという利点を持つ。よって、貯留層位置を把握するための新手法開発は、当初の予定以上の成果が出ている。
多数の現地調査によって、本地域における地質学的新知見が多く得られているため、地質図の作成を進めている。本地域に特化した詳細な地質図の作成は過去になく、地熱開発促進に大きく寄与すると思われる。
以上の点から、本研究は計画通り進んでおり、成果もでている。よって、本研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

最終年度にあたる2017年度は学会発表や論文執筆をより精力的に行うことを予定している。2015年度から2016年度に精力的に現地調査を実施したため、既に多くのデータが得られている。これらの成果をまとめて、広く世の中に還元することが目的である。
現地調査も引き続き行う予定である。報告者はこれまで、本州北端燧岳地熱地域の降水および河川水のモニタリングを行なっている。本地域では近い将来地熱開発のための掘削が行われる予定であるが、掘削が周辺環境に与える影響を評価するために、掘削前後のデータを比較することは不可欠である。そのため、引き続き降水および河川水のモニタリングを実施する予定である。
本地域近傍には下風呂温泉郷が存在する。下風呂温泉郷は温泉地として古くから栄えているが、温泉を生成する熱源の特定はされていない。報告者はこれまでの調査で、下風呂温泉に近い水質を持つ湧水を発見し、その湧水と下風呂温泉を結んだ直線と同方向の走向を持つ断裂を確認している。地熱開発を行う際、近傍温泉の成因を把握することは重要であるため、より詳細な調査を行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Comparative Study of the Subsurface Thermal Structure in Northern Honshu, Japan, Based on Normalized Temperature Data and Solute Geothermometers2016

    • 著者名/発表者名
      Yota Suzuki, Seiichiro Ioka and Hirofumi Muraoka
    • 雑誌名

      Energies

      巻: 9(5) ページ: -

    • DOI

      10.3390/en9050382

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 新しい地熱探査手法としての稠密pHマッピング2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木陽大、井岡聖一郎、村岡洋文
    • 学会等名
      日本地熱学会
    • 発表場所
      郡山市中央公民館(福島県郡山市)
    • 年月日
      2016-10-19 – 2016-10-21
  • [学会発表] むつ燧岳地熱地域における湧水、河川水、温泉水の地球化学的特性2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木陽大、井岡聖一郎、村岡洋文
    • 学会等名
      日本地熱学会
    • 発表場所
      郡山市中央公民館(福島県郡山市)
    • 年月日
      2016-10-19 – 2016-10-21
  • [学会発表] むつ燧岳地熱地域の火山地質学・構造地質学および地熱地質学2016

    • 著者名/発表者名
      村岡洋文、鈴木陽大、井岡聖一郎
    • 学会等名
      日本地熱学会
    • 発表場所
      郡山市中央公民館(福島県郡山市)
    • 年月日
      2016-10-19 – 2016-10-21

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公開日: 2018-01-16  

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