研究課題/領域番号 |
15J10127
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高橋 麻里 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気分離 / オートファゴソーム / イメージング / 多機能性ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
磁気分離能とイメージング能を併有するAg@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子の表面を正電荷を有するポリ-L-リジンで被覆した。ナノ粒子をトランスフェクションにより哺乳細胞へ導入したところ、30分以内にナノ粒子は初期エンドソームへ送達され、1時間後にはナノ粒子はオートファゴソームへ送達されることが共焦点顕微鏡観察により確認された。また、培養時間を長くすると、粒子を含むオートファゴソームの数が増加することが分かった。既存のオートファゴソームの分離法は多くの過程を要し、少なくとも2時間の超遠心が必要であったが、磁気分離を用いることで簡便且つ迅速にオートファゴソームの分離が行えると考えられる。粒子を細胞へトランスフェクションし、細胞膜を温和に破砕した後、自動磁気細胞分離装置を用いて、細胞破砕液の磁気分離を行ったところ、30分以内に磁気分離分画を取得することに成功した。オートファゴソームが分離できたかを確認するために、磁気分離分画に対しウエスタンブロットを行った。オートファゴソームのマーカータンパク質であるLC3はオートファゴソーム膜結合型のLC3-IIと遊離型のLC3-Iの二種類の状態をとることが出来る。磁気分離前後の試料を比較したところ、磁気分離後ではLC3-IIの量が増えていることが分かった。また細胞質内に局在するGAPDHをネガティブコントロールとして調べたところ、磁気分離前では検出されたGAPDHは磁気分離後では検出されなかった。このことからオートファゴソームを磁気分離することに成功したということができる。また、リソソームのマーカータンパク質であるLAMP2も磁気分離後の試料から検出されたことから、オートファゴソームはリソソームと融合したことが示唆される。今後はオートファゴソームの純度を上げ、プロテオーム解析に供しオートファゴソームの膜タンパク質を同定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的はオートファゴソームの磁気分離及びプロテオーム解析によるオートファゴジーに関連したタンパク質の同定である。平成27年度までに磁気分離能とイメージング能を併有するAg@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子とその表面のポリマーの合成に成功した。平成28年度では、ナノ粒子を哺乳細胞へ導入し、培養時間を変化させることで、粒子の細胞内局在の経時変化を追跡することに成功した。この結果から細胞内で粒子を含むオートファゴソームの数は1時間後から増えることが確認できた。また、磁気分離においては当初、磁気カラムへの細胞内小器官の非特異吸着により収率が低下することが懸念されていたが、得られた磁気分離分画からはオートファゴソームのマーカータンパク質であるLC3がウエスタンブロットにより顕著に検出することができ、深刻な非特異吸着の影響がないことが分かった。また、エンドソームのマーカータンパク質とリソソームのマーカータンパク質も磁気分離後の試料から検出され、これらの結果は顕微鏡画像の結果と矛盾しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、磁気分離分画におけるオートファゴソームの純度を向上するために、既報の方法によりリソソームとオートファゴソームの融合を阻害したり、浸透圧によりオートリソソームを破壊することを試みる。そして、得られたオートファゴソームをプロテオーム解析に供して膜タンパク質のプロファイリングを行う。また、粒子表面の電荷を変えた際の細胞への導入効率を調べることで、オートファゴソームを分離するために適した粒子の表面状態を調査する。更に、本研究で用いたナノ粒子と市販の磁気ビーズを比較し、オートファゴソームの磁気分離効率を比較する。その為に、酵素結合免疫吸着検査法などにより磁気分離効率の定量化を行う。
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