研究実績の概要 |
現在メタノールは, 合成ガスから製造されている. 「炭素資源としてのCO2」や「再生可能エネルギーから製造されるH2」の有効利用の観点から, CO2水素化反応によるメタノール合成技術の確立が期待されている. この反応の問題点は, 合成ガスの場合と比べ反応速度が遅いことにあり, 高活性な触媒の開発が必要である. 昨年度までに, Cu/ZrO2触媒が高いメタノール合成反応の活性および選択性を有することを報告してきた. 本年度は, このCu/ZrO2触媒上でのメタノール合成メカニズムを検討した.
調製したCu/ZrO2触媒を25%13CO2/H2混合ガス下, 1気圧, 230 °CでCO2水素化反応させた後, 固体NMRで13Cおよび1Hの化学シフトを測定したところ, ギ酸種が観測された. 続いて、同様の試験を5気圧で行った結果, ギ酸種に加えてメトキシ種が観測された. また, 1気圧で反応試験を行った後に, 5気圧のD2と反応させた結果, ギ酸種は検出されず, 重水素化されたメトキシ種のみが確認された. 従って, Cu/ZrO2触媒を用いた高圧条件下でのCO2水素化反応では, CO2が容易にギ酸種を経由しメトキシ種に転化されることが明らかとなった.
DFT計算を用いて, Cu201クラスターへのH2吸着を検討した. 1気圧でH2吸着を行った結果, H2被覆率に関係なく150度以上ではΔrGが正となった. このため, 230度 (CO2水素化反応温度)では, Cuナノ粒子表面にH2が吸着しえないことが示唆される. また, H2の圧力を20気圧と仮定してDFT計算を行ったところ, 250度以下でΔrGが負となることがわかった. そのため, 230 度でCuナノ粒子上にH原子を吸着させるためには, 加圧することが不可欠であると考えられる。
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