研究課題/領域番号 |
15J10199
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
宮岡 佑馬 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 真核生物 / 能動的負荷変動 / 生物学的排水処理 / DHSリアクター / 18S rRNA遺伝子 / 余剰汚泥削減 |
研究実績の概要 |
都市下水を処理するDown-flow Hanging Spongeリアクターは、低い汚泥負荷条件で運転することが可能であるため、余剰汚泥の発生が抑制されている。この理由に加えて、真核生物(原生動物、後生動物、微小生物)による捕食分解作用も要因のひとつであると推測されているが、DHSリアクターにおいて、捕食機能を持つ真核生物に関する情報(多様性や生態など)は少ない。そのため、真核生物をDHSリアクター内で制御するに至っておらず、余剰汚泥の更なる抑制に向けた技術も開発されていない。本研究では、捕食機能を持つ真核生物をDHSリアクター内で制御するための知見を得るため、次の実験を行った。詳細を次に示す。 (1)有機物負荷が真核生物の多様性に与える影響の把握 本研究では、実下水を供給する流量を変化させることで、有機物負荷の調整を行った。その結果、有機物負荷の上昇直後において、処理水質の悪化とともに捕食機能を持つとされる真核生物の細胞数の増加を確認した。また、この有機物負荷で長期間運転を継続した結果、処理水質の改善とともに真核生物の細胞数の減少を確認した。これらの結果から、真核生物の捕食機能がDHSリアクターにおける排水処理性能向上に関与している可能性が示唆された。 (2)18S rRNA遺伝子を標的としたクローン解析 これまでの検鏡による主観的な評価方法では、真核生物の多様性を正しく評価できていない可能性が高いことが報告されている。本研究では、18S rRNA遺伝子を標的としたクローン解析を行うことで、客観的な指標に基づいて、DHSリアクターに存在する真核生物の多様性解析を行った。その結果、A2O法(嫌気ー無酸素ー好気法)の曝気槽内の汚泥では検出されなかった真菌に属する塩基配列が多数回収された。この結果から、これらの真菌がDHSリアクターにおける下水処理に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トレーサー物質(安定同位体で標識した基質および緑色蛍光タンパク質)を用いた真核生物の捕食特性評価には到達できなかったが、有機物負荷条件の違いが、DHSリアクターにおける真核生物の多様性に与える影響を把握することができた。また、18S rRNA遺伝子を標的としたクローン解析を適用することにより、従来法の顕微鏡による解析方法では評価できていなかった真核生物に関しても評価することができた。上記の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
真核生物を制御するための手法の案として、能動的負荷変動試験を実施する。この能動的負荷変動が、DHSリアクターの排水処理特性や保持汚泥特性(保持汚泥濃度、内生呼吸活性、微生物群集構造)に与える影響を解析する予定である。能動的負荷変動試験については、いくつかの条件を試す予定である。加えて、真核生物の代謝阻害剤を用いて、真核生物の有無が、DHSリアクターの排水処理性能に与える影響についても解析する予定である。
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