本研究では心臓のイメージング手法と局所加熱法を組み合わせることで、細胞内Ca2+変化を伴わない心筋細胞の加熱収縮を生きたマウス内心臓で誘発し、心臓機能を熱的に制御する新たな手法の構築を目指す。そのために、心筋細胞のミクロ情報(収縮や細胞内Ca2+変化)を高時空間分解能でイメージング・解析するとともに、マクロ情報(心電図・心内圧)も同時に計測し、赤外光による心臓の局所加熱の影響を単一細胞レベルから心臓まで異なる階層で評価する。 最終年度となる2017年度では、主に以下の研究を遂行した。 ①これまで開発してきた生きたマウス内心臓を局所加熱する顕微技術を用いて、心臓のマクロ機能(心内圧)の向上を試みた。水に吸収されやすい赤外光(波長1455nm)を心臓の任意の位置に集光し、局所加熱した。加熱のタイミングは心拍に同期または任意の遅延時間をもって制御することができる。照射部位や照射範囲、加熱時間や心拍との遅延時間を変化させたが、これまでのところ心臓のマクロ機能の向上は見られなかった。 ②2016年度に開発した心筋細胞の局所温度計測法を用いて、心筋細胞の拍動に伴う発熱計測を行った。具体的には、単一心筋細胞に蛍光温度計色素を導入する手法や、細胞外から2次元温度分布を可視化する手法を構築し、電気刺激による拍動時の細胞の温度変化検出を試みた。特に後者の計測法においては、データを積算することで測定誤差を0.1℃より小さくすることができたが、これまでのところ拍動に伴う顕著な温度上昇は検出されなかった。
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