• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

アライン等価体の重合を鍵とするグラフェンナノリボンの自在合成

研究課題

研究課題/領域番号 15J10241
研究機関東京大学

研究代表者

高橋 京佑  東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワードグラフェンナノリボン / ナノグラフェン / 脱水素環化 / ポリ(オルト-アリーレン)
研究実績の概要

ポリ(オルト-アリーレン)の平面化によるアームチェアーグラフェンナノリボンの合成を目指し,2つの戦略の検討を行った。
まずは,1つ目のアプローチとして,ポリ(オルト-アリーレン)の溶液中での酸化剤との反応によるグラフェンナノリボン合成に取り組んだ。アライン等価体の重合により合成したポリ(6,7-ジオクチルナフタレン-2,3-ジイル)を7等量の塩化鉄(III)と反応させたところ,紫外可視吸光スペクトルの小さな長波長シフトが観測された。完全に酸化的平面化が進行すれば,より大きな長波長シフトが予測されるため,この結果は平面化が不十分であることを示唆している。
塩化鉄との反応で何が起こっているかを明らかにするために,モデル化合物として,両末端に置換基を持たないナフタレン4量体および両末端にオクチル基を持つナフタレン4量体を合成し,塩化鉄との反応を行った。両末端に置換基を持たないナフタレン4量体の塩化鉄との反応の生成物は,質量分析において,完全に平面化が進行したものに対応するピークが観測されたものの,完全に平面化が進行していないものに対応するものも同時に観測された。構造の決定は溶解性が低く困難であった。両末端にオクチル基を持つナフタレン4量体の塩化鉄との反応の生成物は,完全に平面化が進行したものに対応するマスsペクトルが得られたが,1H NMR 解析では,4種類の3置換ナフタレンに対応するシグナルが観測された。対称性の悪さから,部分的に脱水素環化が進行し,さらに転位が進行したと考えられる。ポリマーも同様の副反応により,平面化が完了していないと考えられる。
2つ目のアプローチとして,基板上へのオリゴ(ナフタレン-2,3-ジイル)の蒸着および加熱によるグラフェンナノリボンの合成を検討した。しかし,ナフタレン2量体,4量体ともに,ポリマーを与えず,分子内環化により環状オリゴマーを与えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アライン等価体の重合によって得られたポリ(オルト-アリーレン)の脱水素環化によるアームチェアーグラフェンナノリボンの合成を目指し,各種酸化剤を検討した結果,望みの化合物は得られなかった。望みの反応が進行しない原因を明らかにするために,オリゴマーを別途合成し,各種酸化剤による脱水素環化反応を検討したところ,転位等の副反応が進行するために,望みのナノグラフェンが得られないことを明らかにした。これにより,副反応を起こさない酸化剤の選択,もしくは副反応が進行しないような新たな戦略が求められることが明らかとなった。
転位等の副反応が進行しないような新たな戦略として,基板上でのポリ(オルト-アリーレン)の成長,および引き続く脱水素環化によるグラフェンナノリボン合成を試みた。それにより,末端に臭素基を有するナフタレン2量体および4量体は基板上加熱により,ポリマーを与える分子間反応ではなく分子内環化が進行し,環状オリゴマーを与えることを明らかにした。これはオリゴ(ナフタレン-2,3-ジイル)が基板上への蒸着後,脱水素環化が進行できないようなコンフォメーションをとるためであると考えられる。これにより,基板上反応によるアームチェアーグラフェンナノリボンの合成のためには,基板上でポリマー伸長が進行しやすいようなコンフォメーションをとる分子のデザインが重要であることが明らかとなった。置換基の導入や蒸着前に部分的に脱水素環化が進行したような分子を原料として用いた戦略が有効であると考えられる。
以上のように,当初の戦略によるアームチェアーグラフェンナノリボンの合成が容易ではないことを明らかにし,打開策を見出すべく,種々の戦略を検討しつつ,目的化合物の合成達成にアプローチしており,今回のような進捗状況の区分を選択した。

今後の研究の推進方策

ポリ(オルト-アリーレン)の脱水素環化によるアームチェアーグラフェンナノリボンの合成を目指し,2つの戦略に取り組む。
1つ目は,溶液中での酸化剤との反応による目的化合物の合成である。現在までに検討した条件では,脱水素環化による平面化が完全には進行せずに,転位等の副反応が進行している。これまでに既に合成している,両末端にオクチル基を有するナフタレン4量体を原料として用い,酸化剤をスクリーニングし酸化的平面化が完全に進行するような条件を発見する。また,副反応の抑制に,ナフタレンオリゴマー上の置換基が重要となることも考えられるため,置換基を導入したナフタレンオリゴマーの合成および酸化も並行して行う。
2つ目は,基板上反応による目的化合物の合成である。現在までに検討した原料では,ポリマー鎖の伸長ではなく,分子内環化が進行して環状オリゴマーが得られた。これは,原料が基板上でポリマー伸長が進行しにくいようなコンフォメーションをとっていることが原因であると考えられる。そこで,ポリマー伸長および平面化が進行しやすいような原料を合成し,それの基板上への蒸着および加熱を試みる。具体的には,ナフタレン環の6,7位にコンフォメーションを制御する置換基を導入したオリゴマー,および部分的に脱水素環化が進行したヘリセン状の構造を持つナフタレン3量体を検討する。
いずれかの戦略において,望みの反応が進行し,アームチェアーグラフェンナノリボンが得られた際には,同条件にアントラセン型の原料を用いて幅の異なるグラフェンナノリボンの合成を行う。得られたアームチェアーグラフェンナノリボンについては,バンドギャップや電荷移動度等の評価を行い,幅や置換基の物性に与える効果を明らかにする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Rh-Catalyzed Stitching Reaction Leading to Unsymmetric Pentalene Derivatives2016

    • 著者名/発表者名
      高橋京佑
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学 京田辺キャンパス(京都府京田辺市)
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] Cyclodehydrogenation of Oligo(naphthalene-2,3-diyl)s Leading to Novel Polycyclic Aromatic Hydrocarbons2016

    • 著者名/発表者名
      高橋京佑
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学 京田辺キャンパス(京都府京田辺市)
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] Formal Aryne Polymerization2015

    • 著者名/発表者名
      高橋京佑
    • 学会等名
      16th International Symposium on Novel Aromatic Compounds
    • 発表場所
      スペイン,マドリード
    • 年月日
      2015-07-05 – 2015-07-10
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2016-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi