研究課題/領域番号 |
15J10262
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
望月 風太 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | CMOSイメージセンサ / 超高速撮像 / 圧縮センシング / コンピュテーショナルイメージング |
研究実績の概要 |
本年度は,提案している像面マルチアパーチャ方式画素内圧縮型超高速CMOSイメージセンサのシミュレーション検討と,昨年度試作したチップの動作検証を行った. シミュレーションでは提案方式における圧縮率毎の再構成精度と,サブクロック方式を使用した際の再構成精度をシミュレーションにより検討した.提案方式では圧縮率を高める毎に再構成精度が下がる傾向があるため,元動画像がわかる程度に再構成できる最大の圧縮率をシミュレーションにより検討した.圧縮率とは,元動画像のデータポイント数とセンサの持つ蓄積部数の比である.シミュレーションでは2×2のサブ画素で1つの画素ブロックを構成する画素ブロックアレイを持つセンサを仮定した.各サブ画素は4つの蓄積部を持つため,画素ブロックごとに計16個の蓄積部を持つ.それぞれのサブ画素が違ったシャッタパターンで対象を時間圧縮撮影し,その後圧縮センシングの理論を用いて時間分解を行う.シミュレーション結果では,圧縮率250%以上になると元動画像の対象物が正確に再構成できなくなった.そのため,最大圧縮率を250%と定めた.また,フレームレートを回路の動作速度よりも高めるサブクロック方式を使用した際の再構成精度の変化を検証した.結果として,サブクロック方式を適用しても再構成精度が下がらないことがわかった. またセンサの動作検証では,任意のシャッタパターンを記憶し撮影中に画素の転送ゲートへそれを出力するシャッタパターン生成回路が正常に動作していることを確認した.シャッタパターン生成回路は約500MHzの動作速度を実現しているため,サブクロック方式と組み合わせることで最大1Gfpsを実現できることがわかった.センサの試作条件に課題があり撮像には至っていないが,再試作を行うことで対応している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案方式のシミュレーションによる評価と,試作したセンサの動作検証を行えたため,順調に進展していると考える.研究計画で予定していた実験による提案方式の実証はセンサの試作条件に問題があり行うことができなかったが,シミュレーションを密に行うことで全体的には十分進展したと考える.
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今後の研究の推進方策 |
前年度は試作条件が原因で試作センサが意図した通りの動作を行えなかったため,今後は試作条件を再調整し再製造を行うことで動作不良の解決を図る.まず再製造したセンサを測定し,時間分解能やノイズ特性などの動作特性を明らかにする.その後,設計したシャッタパターンを用いて時間圧縮撮像を行い,再構成画像を確認する.時間圧縮撮像が正しく行えていた場合,プラズマ加工過程の撮影を実験的に行い,提案方式を実証する. また,圧縮画像から時間分解画像を再構成するアルゴリズムの改良を検討する.これまでは既存のアルゴリズムを使用していたが,それが本方式に最適なものかどうかは検討してこなかった.そのため,本方式に適したアルゴリズムを開発し,再構成精度の向上を図る. 更に,試作センサを使用した新たなアプリケーションについても検討する.例えば,光の飛行時間から距離を算出するTime of Flight距離画像撮影などを考えている.他にもコンピュテーショナルイメージングの分野で本センサが活用できるアプリケーションがないかを検討する. 更に,前年度に試作したセンサの改良版を再試作する.まず前年度試作したセンサのバグを取り除く.更に,時間・空間圧縮方式の検討を行う.時間・空間圧縮方式とは,現在の時間のみを圧縮する撮像方式ではなく,加えて空間情報も圧縮するような撮像方式である.センサでこれを実現するには複数のフォトダイオードが蓄積部を共有する様な構造が必要となるが,最適なアーキテクチャをシミュレーションで検討し,実装する.
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