研究実績の概要 |
本研究は東京大学草創期の理学部に雇用された「画工」と呼ばれた洋画家や日本画家を調査対象に、明治期の学術・教育分野における画工の活動実態を明らかにすることを目的とする。画工と研究者の手によってつくり出された様々な視覚的資料(論文図版、図譜、掛け図、展示参考品など)が、近代日本の学問形成にいかなる関わりをもち、学問の視覚的な伝達にどう貢献したのかを考察するものである。 平成27年度は、明治10年代の東京大学理学部に雇用された画工に関する基本的な情報の収集と関連資料の閲覧・撮影を中心に調査を進めた。また、東京大学最初の欧文紀要“Memoirs of the Science Department, University of Tokio, Japan”(1879-1885年、16冊)、及びその邦訳版紀要『理科会粋』(1879-1883年、7冊)を東京大学附属図書館や国立国会図書館にて閲覧、大学紀要の図版製作工程における画工の関与を検討した。大学紀要に掲載された図版の枚数、図版にあらわされた内容、原画制作者名、印刷会社名、図版寸法などについてデータ入力を行い、分析対象の把握につとめた。さらに、牧野富太郎旧蔵図書(高知県立牧野植物園所蔵)や坪井正五郎関連資料(東京大学大学院情報学環・学際情報学府所蔵)の一部を閲覧、画工や描画法に関する記述の抽出を進めた。
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