研究課題/領域番号 |
15J10363
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神田 惟 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | イスラーム美術史 / 釉下彩・ラスター彩 / 工人・詩人 / ペルシア語詩 / ペルシア語文化圏 / サファヴィー朝 / マムルーク朝 / フスタート |
研究実績の概要 |
前年度の研究成果を踏まえ、①ブルジー・マムルーク朝期(1382―1517)のエジプト・シリアにおける釉下彩陶器・タイル、及び、②15―17世紀イラン製の釉下彩およびラスター彩陶製墓に関する研究成果の公表を進めると同時に、新たに、③陶工についての記述を含む近世ペルシア語史料の入手、および、④来歴が確実な13世紀以降のイラン製銘文入り釉下彩・釉上彩(ラスター彩含む)タイルの調査に着手した。以下、各項目について進捗状況を記す。
①東文研セミナー第8回コプト・イスラーム物質文化研究会にて口頭発表を行ったほか、日本オリエント学会学会誌であるOrient52号に英語論文を投稿し、2016年11月10日に「論文」区分原稿として受理された(2017年3月31日刊行)。 ②前年度末にイスラーム時代の物質文化に関する専門誌であるBrill社のMuqarnasに投稿した原稿の査読結果の通知を受けたことが重要な成果として挙げられる。当該論文は2016年7月25日に2017年11月刊行予定のvol. 34の「論文」区分原稿として受理され、編集者と匿名の査読者から、物質文化研究と文学研究をブリッジする学際的性格の強いものとして高い評価を得た。また、International Society for Iranian Studies(於ウィーン)及びAssociation for the Study of Persianate Societies(於テヘラン)の国際会議において、着眼点の異なる2つの口頭報告(審査あり、英語)を行った。 ③ロンドン(2016年7月28日~30日)およびテヘラン(2017年2月20日~3月15日)にて写本画像および公刊史料の購入を行った。 ④2017年2月20日~3月15日の期間、テヘラン、ゴム、カーシャーン、ゴフルード、ナタンズ、ヤズドで調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内所蔵のフスタート出土・採取の釉下彩陶片を活かした研究を行い、その成果を研究会発表および学会誌Orient掲載という形で国内外に発信することができたため。
また、前年度に得た、銘文中のペルシア語詩を読むというアプローチの潜在的可能性について、イスラーム時代の物質文化に関するトップジャーナルであるMuqarnasへの掲載決定、および、イラン学を牽引する2つの国際学会での発表という形で、確認することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで陶製品の銘文からアプローチすることで明らかになった、15―17世紀イランにおける工人と詩人との密接な関係をテクスト側から裏付けるべく、未公刊史料(おもに同時代詩人伝)の読解に努める。同時に、イラン・イスラーム共和国内で撮影した来歴が確実な13世紀以降のイラン製銘文入り釉下彩・釉上彩(ラスター彩含む)タイルの銘文の解読を行い、個々のタイルの銘文と、タイルが設置された場(モスクや霊廟など)との関連性について多角的に検討を進めていくことで、工人のリテラシーの問題について明らかにしていく。
なお、研究成果の発信の場としては、次年度11月に予定されているMiddle East Studies Association(於ワシントンDC)の年次大会を予定している。
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