研究課題/領域番号 |
15J10394
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
谷 茉莉 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | テクスチャー表面 / 濡れ / 浸透現象 / スケーリング法則 / 液滴の融合 |
研究実績の概要 |
表面の濡れ性(親水性・撥水性)制御や少量液体の輸送問題は、我々に身近であると同時に、産業・応用面からも関心の高い問題である。特に、近年の微細加工技術の進歩により、微細加工表面の濡れは国際的にホットなトピックスとなっている。本研究の目的は、“印象派物理学”の精神で、シンプルな実験と理論から、液体の濡れ・浸透現象及び関連現象の物理的本質を包括的・系統的に理解することである。 本年度は片面が開放されている毛管“Open-capillary(開毛管)”への浸透現象において、ある高さで上昇が停止する“バルク”と、その先端に上昇し続ける“先行薄膜”を発見、バルクの静力学(最終高さ)・動力学の初期(粘性)と後期(粘性・重力)領域、“薄膜”伸長の動力学を明らかにした。特に、バルクの動力学の初期(粘性)領域において、広いパラメータ範囲で成り立つシンプルなスケーリング法則の実験的・理論的に確立した。このようなシンプルなスケーリング法則は、マイクロ流路を使用したデバイス作製時等の応用的場面において、指導原理としての役割を果たし得る。すなわち、スケーリング法則を活用することで、トライアル&エラーを減らすことができる。我々は2つのデモンストレーション実験を通して、開毛管のデバイスとしての有用性も示した。 また、撥水性テクスチャー表面上での液滴の形状変化、高電場下における擬2次元セル中の液中液滴の融合現象についても研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
“Open-capillary(開毛管)”への浸透現象に関する論文をSci.Rep.誌に筆頭著者として発表し、11月にボストンで開催されたアメリカ物理学会(68th Annual Meeting of the APS Division of Fluid Dynamics)で口頭発表した。また、前年度PlosOne誌に筆頭著者として発表済みの研究「フナムシの脚とその模倣表面への浸透現象」に関して国際特許を出願、10月に北京で開催された生物工学の国際会議(International Workshop on Bionic Engineering (IWBE2015))で招待講演(フルサポート)を行った。以上のテクスチャー表面への浸透現象を中心に、国内で2件のセミナー発表を行った。 さらに、両研究内容を博士学位論文にまとめ、平成28年3月23日に博士号(理学)取得、博士後期課程総代として学位を授与された。
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今後の研究の推進方策 |
撥水性のテクスチャー表面上での液滴形状変化に関して、更に実験を重ねる。特に、与えた振動による慣性力と、液滴の形状変化の関係に着目する。また、高速カメラの使用や拡大撮影等により、形状変化を視覚的に捉えることを目指す。 高電場下における擬2次元セル中の液中液滴の融合現象に関して、電場が大きい場合に、液滴と液相界面が一度融合した後、再び分離する現象(「非融合」と呼ぶ)が観察されている。この融合・非融合と電場の関係、融合・非融合時の界面形状の自己相似性に特に注目して解析を進める。また、融合・非融合の動力学(ネックの成長則)を明らかにする。 その他、濡れ現象および関連現象について、“印象派物理学”の精神でシンプルな実験と理論から研究を行う。また、研究をより発展させるために、当該分野の専門家が多くいるフランスに滞在しての研究活動も行う。
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