研究課題/領域番号 |
15J10406
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 保治 東京大学, 理学(系), 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 主鎖修飾ペプチド / 翻訳後修飾 / チアゾール / チアゾリジン / 還元型アミド |
研究実績の概要 |
プロジェクト初年度である本年度は無細胞翻訳系と酵素修飾及び化学修飾とを組み合わせることで、多彩な主鎖修飾ペプチドの試験管内合成系を構築した。これまでに我々は無細胞翻訳系と脱水複素環化酵素PatDとを組み合わせることでアゾリン含有ペプチドの試験管内合成系を確立している。この合成系ではまず無細胞翻訳系により前駆体ペプチドが合成され、続いて前駆体ペプチド被修飾領域中のシステイン/セリン/スレオニンが脱水複素環化酵素PatDにより修飾を受け、チアゾリン/オキサゾリン/メチルオキサゾリンが形成する。この試験管内合成系を用いて合成したアゾリン含有ペプチドをさらに化学的に修飾することにより、多彩な主鎖修飾をもつペプチドの試験管内合成系の構築を行った。 まず、無細胞翻訳系により連続するシステインをもつ前駆体ペプチドを翻訳合成し、これを脱水複素環化酵素PatDにより修飾することで連続するチアゾリンを導入した。この時、一方のチアゾリンが酸化を受けている可能性を見出し、この反応が過酸化水素で促進できることを示した。位置選択的な重水素ラベルを用いて同様の反応を行うことにより、N末側のチアゾリンが酸化を受けチアゾールを形成していることが明らかとなり、チアゾール含有ペプチドの試験管内合系を確立できた。一方、無細胞翻訳系によりシステインを含む前駆体ペプチドを翻訳合成し、これを脱水複素環化酵素PatDにより修飾した後、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを加えることで、ペプチド中のチアゾリンの化学的な還元を試みた。質量分析法により解析した結果、チアゾリジンを経由してペプチドミメティクスとして知られる還元型アミドが形成していることが示唆された。現在、本反応の詳細な解析を進めている。 以上の成果は多彩な主鎖修飾ペプチドの鋳型依存的な合成を達成したものであり、新規生物活性ペプチド創出への応用が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、チアゾール、チアゾリジン、そして還元型アミド構造を主鎖骨格にもつ主鎖修飾ペプチドの試験管内合成系を確立することができた。本手法を既存の進化分子工学的な手法と組み合わせることで、主鎖修飾ペプチドを用いた新規生物活性ペプチド開発が可能になると期待でき、研究は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに確立した主鎖修飾ペプチド試験管内合成法の、新規生物活性ペプチド開発への応用を目指す。翻訳後修飾反応を中心とした試験管内セレクション法の各反応条件の最適化を行い、実際にモデルセレクションを行うことで本手法の有用性を実証することを目指す。
|