研究課題
本年度は、① 癌関連線維芽細胞由来のExosomeの回収とその機能解析、② Exosomeに内包される分子の同定とその機能解析を以下の通り実施した。①CaF由来のExosomeを処理した場合、NF由来のExosomeを処理した場合と比べ、スキルス胃癌細胞株の浸潤能が亢進する傾向が見られた。②各線維芽細胞由来のExosomeを緑色蛍光色素PKH-67で標識し、癌細胞への取り込み試験を行った結果、胃癌細胞表面上に各Exosome由来のPKH-67の蛍光が確認され、胃癌細胞へ取り込みが示唆された。また、NF由来のExosomeと比較べCaF由来のExosomeを処理した胃癌細胞の方が細胞表面のPKH-67蛍光量が多いことから、CaF由来のExosomeの方がより取り込み効率が高いことが示唆された。③miRNAマイクロアレイを用いて、各線維芽細胞由来のExosome中に存在するmiRNAのプロファイルを検討した結果、CaF由来のExosome中に多く含まれるmiRNAとしてmiR-125bおよびmiR-21が同定された。①〜③より、miR-125bはスキルス胃癌間質の線維芽細胞由来のExosomeに内包されていることが示唆された。miR-125bはこれまでに胃癌細胞の浸潤能に関わることが報告されており、CaF由来のExosomeに内包されたmiR-125bが胃癌細胞に取り込まれることで、浸潤能を亢進させる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今年度得られた上記成果のうち①〜③については、国際細胞外小胞学会 (ISEV)、日本癌学会、日本分子生物学会および日本国内で唯一のExosome関連学会である日本細胞外小胞学会で報告した。今年度の研究で、癌細胞周囲の線維芽細胞由来のExosomeに特徴的なmiRNAが存在していること、癌細胞に取り込まれている可能性が示唆された。目覚ましい研究の進展は望めなかったものの、Exosome内部の分子の同定や、その機能の推定までは完了したため、次年度からはすぐにExosome内部分子の機能解析に着手可能であることから、進捗状況として概ね遅延は無いものと判断した。しかし、miR-125bと線維芽細胞由来のExosomeによる癌細胞浸潤能の亢進との関連については、詳細な解析を行うに至っておらず、今後の検討課題である。
本年度の検討結果から、miR-125b、miR-21はスキルス胃癌間質の線維芽細胞由来のExosomeに内包されていること、また癌細胞周囲の線維芽細胞由来のExosomeは胃癌細胞の浸潤能に寄与することが示唆された。今後は、miR-125b、miR-21と線維芽細胞由来のExosomeによる癌細胞浸潤能の亢進との関連について検討を行う予定である。また、3年目の計画であるin vivoの検討についても現在すでに着手しており、まずはスキルス胃癌細胞株HSC-44PEおよび各線維芽細胞、線維芽細胞株を同時にマウス胃壁に打ち込んだ際の腹膜播種浸潤への影響を検討する。その後、Exosome分泌に関わる分子を阻害した線維芽細胞とHSC-44PEを同時にマウス胃壁に移植した際の腹膜播種浸潤への影響を確認することで、スキルス胃癌浸潤、転移におけるCaF由来Exosomeの機能について解析を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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