本研究は、近縁菌であるStreptococcus suisおよびS. parasuisの協働を明らかにすることを目的としている。初年度にS. suisの豚口腔への定着過程を観察することを目標の1つに定めていたが、生後直後に定着するため経時的な観察が難しいことが判明した。そこで、生体試料(糞便、膣スワブ)と環境試料(水飲み場のスワブ、餌箱のスワブ)を追加で解析することで、S. suisが子豚に定着する要因を推定するとともに、S. parasuisの農場内の局在を調査した。採取した試料からDNAを抽出し、S. suisおよびS. parasuis特異的なreal-time PCRによって、それぞれの試料に含まれる各細菌の数を測定した。その結果、すべての唾液試料からS. suisが検出された一方、S. parasuisは特に若い子豚からは検出されないこともあった。その菌数は、S. suisは哺乳子豚、離乳子豚、育成豚、母豚の全てにおいて10の6乗程度含んでいたが、S. parasuisは成長に従ってその個数を増していた。また、他の生体試料は、S. suis、S. parasuis共に唾液での菌数の1/100ほどに減じていた。一方、環境試料は、S. suisの数が唾液試料の1/100に減じていたが、S. parasuisは唾液と同程度またはそれを上回る数のS. parasuisが付着していた。これらの成績は、試料を採取した4農場全てで同じ傾向が見られたことから、地域に関わらず健康豚において共通した特徴であると考えられる。以上より、S. suisの場合には生後直後に母豚から子豚へS. suisが移行し、常在細菌として口腔内に定着すると考えられる。一方、S. parasuisは、唾液等を介して環境に付着するとその環境中で生存または増殖し、環境から豚への移行も起こり得ると考えられる。
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