研究課題
我々は空洞共振器中の量子ビットと強磁性を用いた量子中継器の実現を目指している。超伝導量子ビットは共振器中の電磁場モードと大きな電気双極子モーメントを通じて結合することが知られ、強磁性体スピン集団は磁気双極子モーメントを通じて共振器モードとコヒーレントに結合する。両者は空間的に離れていたとしても、共通の電磁場モードを介して情報をやり取りすることができる。ここで情報の担体は強磁性体中の磁化のエネルギー励起や超伝導回路中プラズモンポラリトンのエネルギー励起となり、量子化された励起エネルギーの有無を情報の0と1に対応させる。前年度に強磁性体中の磁化のエネルギーから超伝導量子ビットへの情報転写を実装したため、本年度は量子中継器の基礎技術である2つの超伝導量子ビット間の相関対生成実験を行う。超伝導量子ビットの相関対生成ゲートには交差共鳴ゲートを用いる。2つの超伝導量子ビットは空洞共振器を介して結合しており、空間的に約10mm程度離れている。片側の量子ビットに、他方の量子ビット共鳴周波数にてマイクロ波パルスを印加することで量子ゲートが実装される。量子ゲートにより生成された状態は、短い距離ながらに非局所相関を持つ状態となる。我々は2つの量子ビットを効率的に結合するマイクロ波共振器を設計した。マイクロ波共振器・量子ビットの共振周波数、量子ビットとの結合係数などは電磁界計算により算出し、量子ゲートの設計に必要なパラメータを算出する手法を確立した。相関対生成の実験を行い、量子状態推定を用いて相関対のコンカレンスを推定したところ0.66であった。コンカレンスの向上のため量子過程推定を用いて量子ゲートを詳しく解析したところ、量子ビットのコヒーレンス時間により相関対の純度が制限されていることを明らかにした。量子ビットのコヒーレンス時間の延伸と、相関対生成ゲートのゲート時間の短縮が今後の課題である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)
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