白色矮星への降着プラズマ流から放射された熱的X線に加え、これが白色矮星表面で反射された成分も取り込み、白色矮星の質量と半径を独立して測定できるX線スペクトルモデルを完成させた。「反射」とは白色矮星を照らすプラズマ流からのX線が、白色矮星表面で散乱または吸収・再放射されて再び白色矮星外部へ放射されることを指す。この成分は、6.4 keVの蛍光鉄輝線と20 keV付近に現れる、コンプトンハンプと呼ばれるスペクトル構造で卓越する。その強度はプラズマ流から見た白色矮星の立体角、つまり、白色矮星半径に対するプラズマ流の高さを反映する。白色矮星の重力ポテンシャルはプラズマ流からの直接成分のX線スペクトルから得られる、プラズマの最高温度から測定でき、白色矮星の質量と半径の比が決まる。さらに、プラズマ流の高さの絶対値は、重力ポテンシャルから流体力学的に算出できる。これらを組み合わせることによって、白色矮星の質量と半径が測定可能になる。 プラズマ流からのX線スペクトルモデルはすでにモデル化が済んでいる。一方で、反射成分に関しては、今回、プラズマ流からのX線スペクトルを基にモンテカルロシミュレーションによってモデル化した。 ハードウェア開発ではXARMプロジェクト搭載X線望遠鏡の開発の準備を進めた。特に、X線望遠鏡に使用する反射鏡の評価システムを開発した。1台のX線望遠鏡には約1600枚の反射鏡を使用するが、実際にはさらに多くの反射鏡を作成し、良いものを選別して使用する。従来、反射鏡の選別は、反射鏡に可視平行光を照射し、反射した光の回折像を人の目で見て行っている。今回私は、波動光学によって反射鏡からの回折像をモデル化し、CMOSカメラで取得したデータににフィットすることで反射鏡の表面形状をシステマティックに評価するシステムを開発した。このシステムは衛星搭載品の開発に使用されている。
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