研究課題/領域番号 |
15J10528
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横井 寛生 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | バッキーボウル / ヘテロバッキーボウル / ヘテロ原子 / 包接 / フラーレン / 超分子 / π共役分子 |
研究実績の概要 |
本年度は、アザバッキーボウル単量体および二量体の物性・機能性のさらなる解明を試みた。これまでの研究で、アザバッキーボウルに対して空気下でトリフルオロ酢酸を添加すると、ラジカルカチオン種が生成することを明らかにしている。今回、対アニオンとしてヘキサクロロアンチモナートをもつラジカルカチオン種を別途合成し、X線構造解析を試みた。その結果、結晶中では、中心の炭素同士で結合を形成したσダイマーとして存在することが分かった。また、溶液中においては、室温付近ではラジカルカチオン単量体として、低温ではσダイマーとして存在することをNMR、ESR、UV-Vis-NIR測定により明らかにした。さらに、アザバッキーボウルのラジカルカチオンを足がかりとして、内部炭素にヒドロキシ基、メトキシ基が結合した化合物の合成にも成功した。付加体の吸収スペクトルを測定したところ、アザバッキーボウルと比べて電子構造が大幅に変化することが分かった。バッキーボウルの内部炭素に置換基を導入している例は限られており、結合形成反応における曲面構造の重要性を示す結果を得ることができた。また、我々はアザバッキーボウル単量体の合成検討の過程で、アザバッキーボウル二量体が選択的に生成する条件を見いだした。そこで、アザバッキーボウル二量体のフラーレン包接挙動についても検証した。その結果、希薄溶液中では1:1で、結晶中では1:2の比でフラーレンとCT錯体を形成することを明らかにした。また、濃縮溶液中でフラーレンを添加すると、ファイバー状の沈殿物が形成していることをSEM測定により明らかにした。MALDI-TOF-MS測定、NMR測定により、濃縮溶液中では、より高次の多量体が形成していることが示唆された。アザバッキーボウル単量体では、高次多量体の形成は確認されず、これらの挙動がアザバッキーボウル二量体に特有であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アザバッキーボウルのラジカルカチオンが、当初の予想に反して、σダイマーを形成することを明らかにした。これまでに固体中、溶液中両方でσダイマーの形成を確認できた例は限られており、さらに詳しく検証することで、二量化におけるお椀型構造の重要性を明らかにすることができると期待される。アザバッキーボウル二量体については、フラーレン包接を用いて高次多量体の形成を示唆する結果を得ることに成功した。この成果は、お椀型化合物とフラーレンを用いた新たな超分子ポリマーの形成につながると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アザバッキーボウルのラジカルカチオン種の二量化の原因を、理論化学計算などを用いて明らかにしていく。また、アミン型窒素をもつ平面分子と比較することで、お椀型構造が二量化に及ぼす影響を追究する。さらに、窒素以外のヘテロ原子をもつバッキーボウルの創出にも取り組み、お椀型構造が与える物性への影響についてさらに検証していく。
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