研究実績の概要 |
昨年度までの成果を踏まえ、本年度も引き続きd不変量の性質解明に注力した。その中で、Hom氏が導入した結び目の「ν+同値類」について成果が得られた。このν+同値類は強力なコンコーダンス不変量で、ν+同値類を決定することでd,ν+,Vk各不変量は計算可能となる。本年度の一つ目の成果は、このν+同値類の間に自然な部分順序を導入し、その応用として種数1の結び目のν+同値類が3種類しかないことを証明したことである。この結果は代数的な考察のみからは得られないことも確かめられており、具体的な多様体を構成する本研究のアプローチならではの成果と言える。本成果は、韓国で開催された国際研究集会「The 13th East Asian School of Knots and Related Topics」等において発表した。 また一方で、本年度は本研究の関連研究における最新の成果にも目を向け、結び目の2重分岐被覆に関する研究にも着手した。特に、Stanislav Jabuka氏, Tynan Kelly氏が交点数の小さな結び目に関してγ[S4](K)を決定したことを受け、本研究への応用を見据えて彼らの研究手法を分析した。その成果として、交代結び目の一般化である4次元交代結び目を定式化し、 「擬交代結び目ならば4次元交代結び目であることの証明」、「交点数が10以下の全ての4次元交代結び目の決定」に成功した。特に、擬交代結び目は整数値不変量によって帰納的に定義される概念であり、その幾何的な性質はほとんど明らかにされていなかったため、本成果により擬交代結び目の一つの幾何的性質が見出されたことは意義深い。本成果は山形大学で開催されえた研究集会「東北結び目セミナー2017」にて発表した。
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