本年度は以下のような研究を行った. (1)べき乗型反応項を伴う非線形放物型方程式に対し,べきの指数が臨界値以上の場合に動的特異点を持つ解の構成を行った.そのような場合においては,前年度までに行ってきたような,線形部分の特異解をもとにした考察ができないことが分かっているため,より精密な比較関数を構成することを目標に研究を進めた.結果として,先行研究において課されていた時間大域的な特異解が存在するための非線形項の指数の制限は緩められるということが明らかになった.なお,上の結果に関してはさらに洗練した上で論文として投稿すべく,現在準備中である. (2)急速拡散方程式に対し,動的特異点を持つ解を構成した.前年度までは,線形熱方程式に一つの非線形項を加えた,いわゆる半線形熱方程式を扱っていた.このような方程式に対しては線形部分の特異解をもとにした解析が非常に有効であった.これは線形部分の解が熱核を用いて具体的に書けるという事実がもとになっている.急速拡散方程式に対してはそのような事実を用いることができないため,前年度までとは異なった解析手法を用いる必要がある.そこで急速拡散方程式に関する豊富な知識と経験を持っている Marek Fila 教授 (Comenius University) と議論を重ね,拡散速度がある意味で線形熱方程式に近いという仮定のもとで動的特異点を持つ解を構成した.なお,上の結果に関しては現在論文投稿の準備中である.
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