近年、多くの国で森林法が改正され、林業地において木材生産だけでなく生物多様性にも配慮することが求められるようになってきた。その方法として、近自然型施業が注目されている。同施業では、従来は全て持ち出されていた立木や倒木をあえて施業地に残すことで、生物の棲家を確保する。しかしながら、それに伴う生物多様性保全効果や経済的損失(あるいは便益)は十分に定量化されていない。 採用3年度目の今年は、データの分析および論文執筆を行った。具体的には、2016年度に近自然型施業実験地で収集した土壌サンプルからのDNA抽出・PCR・シーケンシングを完了させた。森林動態シミュレータを使って森林の遷移・群集集合について解析した論文を国際英文誌に投稿し、現在revision中である。本論文は、森林の遷移過程において生物群集の機能的・系統的多様パターンがどのように変化するかをシミュレーションによって明らかにしたものであり、森林管理が生物多様性に与える影響を評価するうえで役に立つ成果となっている。この他、植物の機能的・系統的多様性について解析した論文、および森林における生物群集の再集合則に関する論文を国際英文誌に投稿済みである。2017年4月27日から2018年3月4日まではカナダ・トロント大学のMarc Cadotte教授の研究室に滞在し、同教授の指導の下で論文執筆を行った。アメリカ生態学会年次大会にてポスター発表を行った。第65回日本生態学会大会にて英語口頭発表を行い、Best English Presentation Awardを受賞した。また、同大会にてEcological Research Paper Awardを受賞した。
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